ルカの福音書講解説教(90)/『平凡な人々、非凡な召命』④/パート 2/ペテロ(その 2)/2018.07.22『荒削りの器を有益な神の器へ!』―生来の資質に関わり、経験を通して指導者を作り上げられる神―《ルカ 6:14a》
【序 論】
●12 使徒シリーズの一番目の器であるペテロについて、二回目のメッセージを取り次ぎます。『平凡な人々、
非凡
ひ ぼ ん
な召
しょう
命
めい
』というテーマに取り組んでいますが、聖書には人間の性格や気質や資質などが興味深く
記されており、その人間を神の目的に沿って作り上げられる醍醐味を味わう事ができます。私はペテ
ロに関するメッセージを準備しながら、「なるほど、なるほど」という言葉を連発しながら御言葉の真理に共鳴
し、早くこのメッセージを取り次ぎたいという思いに駆られました。
●今回のメッセージの主題は『荒削りの器を有益な神の器へ!』で、副題が「生来の資質に関わり、経
験を通して指導者を作り上げられる神」です。御言葉の真理に心を向けて行きましょう。
【全体アウトライン】
◎ 序論/シモン&ペテロ(ルカ6:14a)/済
[1]ペテロの生来の素材/今回
[2]ペテロの人生経験/今回
[3]ペテロの自信と落胆、回復と安定/次回
[4]ペテロの成熟した品性/次回
【今回のアウトライン】
[1]ペテロの生来の素材
1)好奇心/興味と関心の旺盛なタイプ(マタイ 15:15/他)
2)主導権/リーダーシップを発揮したいタイプ(マタイ 16:16/他)
3)参画型/物事に関わりたいタイプ(マタイ 14:25-34/他)
[2]ペテロの人生経験
1)イエス様について偉大な啓示が与えられたこと(ヨハネ 6:66-69)
2)イエス様によって偉大な約束が与えられたこと(マタイ 16:13-19)
3)イエス様をいさめたこと(マタイ 16:22)
4)イエス様を否定したこと(マタイ 26:31-35、69-74)
【本 論】
●次の質問から始めて参りましょう。リーダーになるというのはそう生まれたからなのか、それとも作られ
て行くものなのか、どちらなのか、それとも両方なのか?その質問に対する最上の答えは、そのどちらで
あっても、リーダーになる者は、そのリーダーとしての資質がそれぞれの人生経験
....
や社会経験
....
や生活
..
体験
..
を通して作り上げられ、整えられて行かねばならないという事です!使徒たちにとっては、主
に、イエス・キリストと関わるという体験を通して作られて行きます!まずは資質という点から、そして
次に経験や体験という点から聖書を学び、ペテロという人物に近づいて行く事にしましょう。 ―1―
[1]ペテロの生来の素材
●第一ポイントとして、弟子の筆頭であるペテロのリーダーとしての資質について聖書の記述を追って行
きますと、少なくても三つ明らかな点を挙げる事ができます。その一番目が、アウトラインで見ましたように好
奇心、二番目が主導権、そして三番目が参画型です。それでは、ペテロの好奇心にスポットを当てまし
ょう。
1)好奇心/興味と関心の旺盛なタイプ(マタイ 15:15/他)
●一番目に、ペテロは旺盛な好奇心
...
の持ち主でした!指導者たちは、知識が力である
.......
という事を
よく知っています!ですから、質問をしない人々は良いリーダーにはなれません!リーダーとは、自分
が理解できない事を放置しません!他の人々の洞察に耳を傾けます!自分たちが調べていない事
や分析していない事について気に留めます!そして、問題が解決されないまま放置はしません!リ
.
ーダーとは、飽く事のない好奇心の持ち主です
.....................
!
●福音書を読みますと、ペテロは他は 11 弟子の質問を合わせた数よりも多くの質問をしている事に
気付かされます!それは、彼の好奇心がいかに旺盛なものであったのかを示しています!ある時、パ
リサイ人たちや律法学者たちがイエス様に対して、「なぜ、あなたの弟子たちは長老たちの言い伝えを破る
のですか。パンを食べるとき、手を洗っていません」(マタ 15:2)と問いただして来ました。すると、イエス様は彼
らを偽善者呼ばわりして、「この民は口先でわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。彼らがわた
しを礼拝しても、むなしい。人間の命令を、教えとして教えるのだから」(15:8-9)と語られています。そして、
「群衆を呼び寄せて・・・聞いて悟りなさい。口に入る物は人を汚しません。口から出るもの、それが人を汚
すのです・・・彼らのことは放っておきなさい。彼らは盲人を案内する盲人です。もし盲人が盲人を案内すれ
ば、二人とも穴に落ちます」(15:10-11、14)と教えられました。すると、すかさずペテロが、「私たちに、その
たとえを説明してください」(15:15)と求めました。彼は真理を知りたくてしょうがないのです!
●またある時、イエス様がたとえを持って再臨について話されました。「帰って来た主人に、目を覚ましている
のを見てもらえるしもべたちは幸いです。・・・あなたがたも用心していなさい。人の子は、思いがけない時に
来るのです」(ルカ 12:37、40)、と。すると、またもやペテロが「主よ。このたとえを話されたのは私たちの
ためですか、皆のためなのですか」(12:41)と質問しました。イエス様が再臨された時に霊的に「目を覚ま
して」なすべき事を忠実に果たしているのは信者を表しており、またペテロの質問の後に説明された再臨時
に霊的に眠り、怠惰に振舞っている者が不信者であるという事をその質問に沿って説明されました。
●またある時は、人を赦すという事について次のようなストレートな質問を投げ掛けました。「主よ。兄弟が
私に対して罪を犯した場合、何回赦すべきでしょうか。七回まででしょうか」(マタ 18:21)、と。するとイ
エス様は、「わたしは七回までとは言いません。七回を七十倍するまでです」(18:22)と答えられました。す
なわち、無限に赦しなさい、あなたが赦す時には、それがいつも最初に赦す時だと思いなさい、それが神の
赦しのご性質だという事を告げられました!そしてまたある時は、ペテロが率直に、「ご覧ください。私たち
はすべてを捨てて、あなたに来ました。それで、私たちは何をいただけるでしょうか」(マタ 19:27)と質
問しました。(続く) ―2―
するとイエス様は、「人の子がその」千年王国の「栄光の座に着くとき、その新しい世界で、わたしに従って来
たあなたがたも十二の座に着いて、イスラエルの十二の部族を治めます」(19:28)と答えて、彼らへの報いに
ついて教えられました。それから更にある時、ペテロはヤコブやヨハネやアンデレと共に、患難時代とイエス
様の再臨のしるしが何であるのかについて質問しました(マコ 13:3-4)。それから最後に、イエス様が
復活された後でも、ペテロはイエス様に質問を浴びせ続けました(ヨハ 21:20-22)。ペテロのもっと知
........
りたいそしてもっとより良く理解したいという絶えざる願いは、彼がリーダー
...................................
の資質を持っている
.........
とい
..
う事の表れで
......
した
..
!
2)主導権/リーダーシップを発揮したいタイプ(マタイ 16:16/他)
●ペテロの二番目のリーダーとしての重要な資質は、主導権
...
を握っているという事でした!面白い表
現ですが、この世には三つの種類の人々がいると言われています。一つ目が事を起す人です。二つ目が
起こった事を眺める人です。三つ目が「何が起こったの」と尋ねる人です。言うまでもなく、リーダーは
「事を起す人
.....
」です!そういう意味で、ペテロは例外ではありませんでした!ペテロは質問の殆どをイ
エス様にしただけでなく、彼は往々にして、主が尋ねられたいかなる質問にも一番目に答えていま
した!とりわけその中でも、ペテロがイエス様に対して、「あなたは生ける神の子キリストです」(マタ
16:16)と告白したのは、イエス様の質問に対する彼の偉大な答えでした!その告白については、ペ
テロの経験というところで取り上げる事にします。
●それからまた、ルカ 8 章で、「十二年の間」(8:43)長血をわずらった女性が群衆に紛れてイエス様の「衣
の房に触れた」(8:44a)時、たちどころにその「出血が止まっ(て)」(8:44b)癒やされました。するとすぐさまイ
エス様が、「わたしにさわったのは、だれですか」(8:45)と言って回りを見渡されました。そこで、案の定ペテ
ロがしゃしゃり出ました。「先生。大勢の人たちが、あなたを囲んで押し合っています(よ)」(8:45)、す
なわち「あなたが人々と接触するのは無理もない事ですよ」と即答しました。イエス様の意図された質問
からは程遠い頓珍漢な答えなのですが、彼はどこにおいてもリーダーシップを発揮したいというタイプ
でした!
●ペテロのリーダーシップがよりはっきりと表されたのがゲッセマネの園でした。二百名から六百名に及
ぶローマの一隊の兵士たちとユダヤ人指導者たちが、イエス様を捕縛しにそこへ到着した時の事です。危険
が迫った事を察知したイエス様の「周りにいた者たち」(ルカ 22:49)が、「主よ。剣で切りつけましょうか」(ルカ
22:49)とイエス様に尋ねました。しかし、ペテロはイエス様からの答えを聞かずに、勇敢にも即行動に移
しました。ペテロがこのローマの一隊の兵士たちの間を切り開きながら進んで、愚かにも、大祭司のしもべ
マルコスの「右の耳を切り落とし(て)」(ヨハ 18:10)しまいました。ペテロがあの場で右耳にねらいをつけて、
右の耳を切り落とそうとしたのではありません。そんな器用な事をあの場で行えるはずがありません。ペテロは
恐らくマルコスの頭を狙ったつもりが、マルコスの素早い反応によって交わされた事によって、耳だけが切り落と
されてしまい、彼は命拾いをしました。
―3―
●このケースでは、ペテロの主導権が誤った方向へと彼を導いていました。それゆえ、イエス様の答えを
待たずに勝手に振舞ったペテロの行動が、イエス様の叱責を買う事になりました!イエス様は何と彼に言
われたでしょうか?「やめなさい。それまでにしなさい」(ルカ 22:51a)、「剣をもとに収めなさい。剣を取る者
はみな剣で滅びます」(マタ 26:52)、「父がわたしに下さった杯を飲まずにいられるだろうか」(ヨハ 18:11)と語
られました!そして、イエス様は引き続きどのような行動に出られたでしょうか?マルコスの「耳にさわって
彼を癒された」(ルカ 22:51b)のです!イエス様とペテロとの間はまだまだ格段の差があります。
●ペテロがこの状況を正しく判断する事無しに行使した主導権でしたので、それは彼を軽率な行動に
駆り立ててしまいました。でも考えてみますと、受身で、小心で、ためらっている人を動機付けるよりも、
果敢に挑戦して行く人を押える方がまだまだた易い事なのです。そのような気質の
........
持ち主である
......
ペ
.
テロが
...
イエス様と関わるという体験を通して彼が形作られて行く時に
............................
、また聖霊によって制御され
.............
て行く
...
時に
..
、彼
..
が進んで勇敢に主導権
..........
を握って行くのなら、彼は大胆且つ何をも恐れない福音の宣
...........................
教者と
...
なるのです
.....
!そのようになった姿が、使徒の働きの中に記された初代教会の指導者であるペ
テロに見られるようになるのです!(使 2:14-40、3:12-26、4:8-12、19-20、5:29-32)
3)参画型/物事に関わりたいタイプ(マタイ 14:25-34/他)
●ペテロの三番目のリーダーとしての資質は、彼が物事に積極的に関わりたい
............
という行動に見られま
す!全ての真の指導者たちにも見られますように、ペテロもまた行動のあるところに彼自身がいま
した!このシリーズに入って取り上げた一つの例に、イエス様が水の上を歩かれるという出来事がありまし
た(マタ 14:25-34)。イエス様が夜明け前に、ガリラヤ湖上の舟の中にいる弟子たちのところへ、忽然と現れ
て近づいて来ました。弟子たちは、自分たちは幽霊を見ていると思い込んでおびえましたが(14:26)、イエス
様がご自分である事を告げて彼らを安心させるという出来事でした(14:27)。
●そこで、物事に関わりたい参画型タイプのペテロが衝動的になって、「主よ。あなたでしたら、私に命
じて、水の上を歩いてあなたのところに行かせてください」(14:28)と声を上げました。すると、イエス様
が「来なさい」(14:29)と言われた後に、「ペテロは舟から出て、水の上を歩いてイエスの方に行(き)」
(14:29)ました。他の弟子たちを舟に残して後、自分の目に映ったあの姿は本当のイエス様かそれとも幽霊
なのかとよくよく考えてみたのかも知れません。ペテロは既に行動の中におり、イエス様がおられるところに向か
いました。舟からいったん出たペテロの信仰は、「強風を見て怖くな(って)」(14:30)突然しぼんでしまいまし
た。それで、イエス様はペテロが「沈みかけ(て)」いたところを「手を伸ばして」(14:31)助け出されました。ペ
テロは実に超参画型のタイプです!考える事より、行動が先なのです。でも見逃してはならない点
があります!多くの人は、イエス様がペテロの信仰の無さを叱責された事だけを強く記憶していま
すが、いかがでしょうか、舟を決して離れなかった
...........
他の弟子たち
......
に関して
....
は忘れているのです
.........
!
●また同じように、ペテロがイエス様なんて知らないと言って主を否定した時、彼そして(恐らくヨハネ)の
みが「大祭司の庭」(マタ 26:58、69)に居合わせていました。しかし他方、他の弟子たちは自分たちの命
の危険を察して、ゲッセマネの園の時点で既に逃げ去っていました(マタ 26:56)。(続く)
―4―
しかしながら、この参画型のペテロは、イエス様に余りにも深く関わり過ぎてイエス様を完全に見捨
てる事ができないでいたのです!復活後もそうでした。墓が空という知らせを受けた時、ペテロとヨハネは
一目散にその墓に向かったのですが、若いヨハネの方が先に墓に到着していました。救い主イエス様に対す
るペテロの深い献身の思いは彼自身を駆り立ててヨハネのそば通り過ぎさせ、ヨハネより先に墓の中に入ら
せました!(ヨハ 20:4-6)ペテロは、実に参画型の人で、物事全てに関わりたくてしょうがない人物で
した!
―まとめ―
●関わる事を避ける人は、人々を導くに当って効果的な働きをする事はできません!自分の安全
や心地良さや快適さのゆえに、もめごとから離れて関わろうとしない人に、人々はついては来ませ
ん!真のリーダーは、正面から導くのであって後ろからではないのです!
[2]ペテロの人生経験
●ペテロが神の願われるリーダーとなる前に、彼は自分の経験を通して、生来の資質が整えられて
そして作り上げられて行く必要がありました!経験や体験というのは
..........
、
.
時に厳しい教師です
.........
!様々
な経験を通してペテロが学んだ教訓は、劇的なものでありまた痛みを伴うものでもありました!彼
は時に神学的な高尚な洞察によって高められたかと思うと、逆にまたある時は、余りにもひどい無知
のゆえに奈落の底に突き落とされるのでした!何とそれが一つの出来事の中で立て続けに起こって
しまうのです(マタ 16:16、23)。ペテロが神によって用いられる事ができるよう、そのために用いられ
た彼の四
.
つの経験
....
が福音書に記されています!
1)イエス様について偉大な啓示が与えられたこと(ヨハネ 6:66-69)
●その一番目のペテロの経験ですが、ヨハネ 6:66-69 で、イエス様に関する偉大な啓示がペテロに与
...................
えられ
...
た
.
事です
...
!約五千人の成人男性そしてそれよりも更に多い女性や子どもたちという大群衆に食物
を与えて養われて後に、イエス様はご自分を「いのちのパン」(6:35、48)として表されました!イエス様が聴
衆に対して、ご自分の「肉を食べ、その血を飲まなければ、あなたがたのうちに、いのちはありません」(6:53)
と語られ、救い主の十字架での身代わりの死について伝えられました。そして、聴衆に対してご自分に完全
に従うよう求められました。すると、「弟子たちのうちの多くの者が離れ去り、もはやイエスとともに歩もうとはし
(ません)」(6:66)でした。
●それから、今度は 12 弟子に向かって、「あなたがたも離れて行きたいのですか」(6:67)と問われました。
弟子たちはこの大群衆の給食という奇蹟の時には、群衆の熱狂に巻き込まれてしまって霊的に鈍くなってい
たと思われます。イエス様が夜明け前に湖の上を歩いて弟子たちの舟に乗り込まれたという奇蹟を体験して、
彼らの信仰が強められる事になりました(マコ 6:52)。そのような背景の中で、いつものように、ペテロが弟子
たちを代表して、「主よ。私たちがだれのところに行けるでしょうか。あなたは、永遠のいのちのことば
を持っておられます。私たちは、あなたが神の聖者であると信じ、また知っています」(6:68-69)と答
えました!イエス様についてのペテロ並びに他の弟子たちのこの確信は真理そのものでしたが、実
にそれは神からの啓示によるもの
...........
でした!(続く) ―5―
イエス様に関するペテロや他の弟子たちの後々の告白は、「あなたは生ける神の子キリストです」(マタ 16:16)
という表現に見られますが、イエス様に対する彼らの告白がよりはっきりしたものとなって行きます!
―まとめ―
●このヨハネの福音書における経験は、ペテロに対して、宣べ伝えるべきメッセージは神が与えて
下さるという事を彼に確信させました!助け主である真理の御霊が、イエス様が教えられた真理
を思い起こさせ(ヨハ 14:26,16:13-14)、語らせて下さるという事を彼はこの体験を通して教え
られたのです!ペテロは単に漁師であり、ラビの学校で教育を受けた事も無いのですが(使 4:13)、彼は
自分が語る事について心配する必要がありませんでした!なぜなら、神が語るべき事を示されるか
らです!この確信を通して、聖霊はペテロを大胆にそして恐れなく福音を語る者へと導かれて行き
ます!そのペテロの証しが、使徒の働きの前半 12 章までにはっきりと記録されています!
2)イエス様によって偉大な約束が与えられたこと(マタイ 16:13-19)
●二番目に、もう一つ、ペテロの生来の資質が整えられそして作り上げられるために用いられた経験
とは、彼に偉大な約束が与えられた事でした
.................
!「あなたは生ける神の子キリストです」(マタ 16:16)と
いうペテロの告白に対するイエス様の応答が、その後の御言葉に次のように記されています。
16:17・・・「バルヨナ・シモン、あなたは幸いです。このことをあなたに明らかに示したのは血肉ではなく、天
におられるわたしの父です。 16:18 そこで、わたしもあなたに言います。あなたはペテロです。わたし
はこの岩の上に、わたしの教会を建てます。よみの門もそれには打ち勝つことはできません。
16:19 わたしはあなたに天の御国の鍵を与えます。あなたが地上でつなぐことは天においても
つながれ、あなたが地上で解くことは天においても解かれます」(マタ 16:17-19)。
●教会は、主イエス・キリストが救い主であり、神の御子であるという真理の上に建てられます!ペ
テロに与えられた特権はその真理を明瞭にするだけでなく、自分が死に至るまでそれを語り続ける
という事でした!そうする事によって、ペテロはよみの門を閉じ、それによってよみの力が教会に打
ち勝つ事ができません!そしてまた一方、天の門を開いて、信じる者全てのために、すなわちユダヤ
人(使 2:14-40)と異邦人(使 10:1-48)に祝福をもたらします!
3)イエス様をいさめたこと(マタイ 16:22)
●三番目ですが、神はペテロの大きな罪でさえも用いられて、彼を更に作り上げて整えられるので
....................................
す
.
!ペテロの変わりやすい気質
........
がどの体験よりもよりはっきりと現されているのが、恐らく、あのペテロ
の「あなたは生ける神の子キリストです」(マタ 16:16)という偉大な告白をした直後の出来事であろう
と思われます。ペテロは神の啓示を通してイエス様の真の姿、その本性が何であるのかを告白しま
した!そして、先程述べましたように、偉大な約束と特権にあずかる者となりました!彼はその時絶好
調でした!しかし、驚くべき事に、ペテロがすぐさまイエス様をあえていさめる
............
という行動を取る事
によって、彼は本当に愚かな罪深さの中へ真っ只中に落ち込んで行きます!
―6―
●イエス様は、ご自分が拒絶され死に渡される事について厳かに弟子たちに示し始められました
(16:21)。すると、またペテロが表舞台に現れます。厚かましくも、彼は「イエスをわきへお連れして、い
さめ始め」ました。「いさめ(る)」とは、「主(おも)に目上の人に対して、その過ちや悪い点を指摘し、改
めるように忠告する」あるいは「いましめる」という意味の言葉です。ペテロはイエス様をどのようにい
ましめましたか?「主よ。とんでもないことです。そんなことがあなたに起こるはずはありません」(6:
22)、と!
●ペテロの神学の中には、死に行く救い主という概念はどこにもありませんでした。そして勿論、彼の
同胞であるイスラエル人々にとってもそうでした。彼は、救い主がローマの支配者たち追い出し、神の契約の
約束と名声と栄光の場所にイスラエル国家を導く事を期待していました。イエス様のペテロに対する反応
は、素早くまた彼を狼狽させました!ペテロこそ神によって祝福された者だとイエス様が宣言した人
物でしたが(16:17)、ゾッとする事に、イエス様は彼をサタンと呼ばれました!(16:23)
―まとめ―
●ペテロは自分の役割を過大に評価してはいませんが、彼がこの出来事から学んだ教訓は、神のご計
画にははっきりとした制限が設けられているという事でした!(ロマ 13:3)イエス様のペテロへの叱責
が物語っている重要な点は、ペテロが神に用いられたように、
...............
また
..
サタンにも用いられるという事で
...............
す
.
!指導者
...
と
.
はその影響力と尊敬のゆえに命じる事
.................
のできる立場にい
........
ますので、彼らは神によって
.............
用いられる可能性があ
..........
り
.
また逆にサタンによって用いられる可能性もあ
.....................
るので
...
す
.
!ですから、指導者
...
はペテロのように、御言葉に表されている神のご計画の中で
...........................
仕えて
...
働くという事を学ばなければな
..............
りません
....
!自分個人の計画を成し遂げるために、その立場を
......................
利用し
...
ては
..
決して
...
いけ
..
ないのです
.....
!
4)イエス様を否定したこと(マタイ 26:31-35、69-74)
●最後の四番目です。ペテロの人生における最も痛みの伴った経験とは、言うまでもなく彼のキリス
ト否定です!ご自分の死の前夜、イエス様は弟子たちに対して、神は、「わたしは羊飼いを打つ。すると、
羊の群れは散らされる」(マタ 26:31)というゼカリヤの預言を引用されて、その晩、彼らが一時的にご自
分を見捨ててしまう事を通告されました。しかし、ペテロは自信を持って、他の弟子たちが何をしようが、
自分はイエス様から決して離れない事を断言しました(26:33)。
●イエス様が、ペテロがご自分を 3 回にわたって否定する事を告げられた時、彼は決してイエス様を
見捨てる事はないと力を込めて断言しました(26:35)。しかし、いつも
...
イエス様が正しく、ペテロが間
..............
違
.
う
.
のです
...
!ペテロの大胆で尽きない忠誠心の発言後から間もなく、彼は繰り返しそして語気を
強めてイエス様を否定しました!(26:69-74)ペテロの最後の否定の言葉の後に、「主が振り向いてペ
テロを見つめられ」ました。「ペテロは、『今日、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言います」と
言われた主のおことばを思い出し』」(ルカ 22:61)ました。ペテロは自分がしてしまった現実を突き付けら
れ、彼は立ち直れないほどに打ちひしがれ、「そして、外に出て行って、激しく泣いた」(22:62)ので
した!彼の高慢な自信の真価が試されたのでした!彼は、自分が全く到達していない者だという
事をまざまざと知らされたのでした!
―7―
―まとめ―
●この経験によって、ペテロは自分の人間力による強さと力に頼っている自信というものをズタズ
タにされました!人間的な自信が木端微塵に砕かれたのです!指導者は強さを得るために、主に
...............
頼る事を学ばなけれ
.........
ばなりません
......
!指導者は
....
、宗教改革者マルチン・ルターが讃美歌に記した「神
..
はわが砦」という事を認めなければな
.................
らないのです
......
!
【まとめ】 それでは、今回のメッセージのまとめをしましょう。
●今回のメッセージを通して、前半は、ペテロの好奇心、主導権、参画型という彼本来の素材を、神
がどう関わってそれらを有用なものへと作り変えて行ったのかを見て参りました!後半は、ペテロが自
分の経験を通して彼本来の資質がどのように整えられ、そして作り上げられて行ったのかについて学
びました!経験や体験というのは時に厳しい教師であり、それを通して学んだ教訓には非情な痛み
が伴うものでした!しかし、神が許して通らせるその経験こそが、神が望まれる器に成長するために
欠かせないものでした!
【適 用】 それでは、今回のメッセージの適用をしましょう。
●メッセージをお聞きなった皆さんが、皆が指導者の賜物を持っている訳ではありませんが、あなたの性質
や性格をご存じの主が、愛と忍耐をもってそれらに関わられ、主が望んでおられる器へと作り変え
られるのです!いかがでしょうか、主はあなたの性質や気質をこれまでどう取り扱われ導いて来られた
でしょうか?主が愛と忍耐をもってあなたに関わり続けておられる事に対して、あなたはどう思われる
でしょうか?また、あなたの資質が整えられて作り上げられるために主が許しておられる体験につい
て、あなたはどう思われましたか?経験や体験という厳しい教師を通してあなたを導いておられる主
に対して、あなたはどう思われますか? それでは、ペテロを取り扱われたイエス様の事を思いつつ、それ
ぞれの信仰の歩みに当てはめながら祈りの時を持つ事にしましょう。
【締めの御言葉】
シモン、シモン。見なさい。サタンが、あなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って聞き届
けられましたしかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。
だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」(ルカ22:31-32)。
[参考文献]
・ ジョン・マッカーサー、『マッカーサー新約注解書/ルカの福音書6-10』(ムーディー出版、2011)(John MacArthur、
The MacArthur New Testament Commentary、 Luke 6-10、 The Moody Bible Institute of Chicago、
2011、 pp.28-32.)
―8