ルカの福音書講解説教(5)/メッセージ原稿/『ザカリヤへの神の啓示』(その 2)/2016.04.24
『傲慢なヘロデから謙虚なザカリヤへ!』
―祭司ザカリヤ夫妻の義認と聖化そして苦悩と失意ー
《ルカ 1:5-14、18-25/今回は 1:5b-7》

【序 論】
●前回から、主イエス・キリストの『最も偉大な生涯の物語!』がスタートしました。ルカは、その物語を『ザ
カリヤへの神の啓示』から始めています。前回のメッセージを『義の太陽が夜明け前に上る!』という主題
で取り次ぎ、霊的暗黒時代に、神は救い主を「義の太陽」(マラ 4:2)として昇らせるという内容でした!そし
て、その前に、神は先駆者としてバプテスマのヨハネを送られ、救い主の到来の道備えをされるというところを
取り扱いました。
●さて今回は、『ザカリヤへの神の啓示』の二回目で、『傲慢なヘロデから謙虚なザカリヤへ!』という
主題でメッセージを取り次ぎます。ヘロデ王から流れ出た闇が、祭司ザカリヤとその妻エリサベツから
流れ出る光へと物語が移行します!傲慢なヘロデから謙虚なザカリヤへ移行して行きます!獰猛
なヘロデから善良なザカリヤに移行するのです!特に、今回のメッセージで注目する点は、ザカリヤ
とエリサベツの義認と聖化です!しかし、それとは裏腹に、彼らの通された苦悩と失意についても取
り上げ、神の主権による取り扱いの深さについても学びます!
【全体のアウトライン】
『ザカリヤへの神の啓示』
◎序論/義の太陽が夜明け前に上る!/済
[1]最も偉大な生涯の物語の時代的背景(ルカ1:5a)/今回
[2]ザカリヤ夫妻の義認と聖化そして苦悩と失意(ルカ1:5b-7)/今回
[3]ザカリヤの祭司としての栄誉ある任務(ルカ1:8-10)/次回
[4]ザカリヤへの神の預言の啓示(ルカ1:11-14)/次回
[5]ザカリヤの不信仰に対する神の叱責(ルカ1:18-25)/次々回
【今回のアウトライン】
[1]最も偉大な生涯の物語の歴史的背景(ルカ1:5a)
1)ヘロデ(1:5a)
2)ユダヤの王ヘロデ(1:5a)
ア)ヘロデ王の背景
イ)ヘロデ王の人気取り政策
3)ヘロデ王の闇の側面(マタイ 2:16-18)
―1―
[2]ザカリヤ夫妻の義認と聖化(ルカ1:5b-7)
1)ザカリヤの務め、エリサベツの先祖(1:5b)
2)ザカリヤとエリサベツの義認(1:6a)
3)ザカリヤとエリサベツの聖化(1:6b)
4)ザカリヤとエリサベツの苦悩と失意(1:7)
【本 論】 それでは、今回のメッセージの本論に入りましょう。
[1]最も偉大な生涯の物語の歴史的背景(ルカ1:5a)
●それでは、第一ポイントの最も偉大な生涯の物語の歴史的背景です。5節の冒頭に、「ユダヤの王ヘロ
デの時に」とあります。今回のメッセージの前半は、このヘロデ王に焦点を当てる事にします。
1)ヘロデ王(1:5a)
ア)ヘロデ王の背景
●救いの物語の最初の言葉は、「ユダヤの王ヘロデの時に」です。「ヘロデ」は、ヘロデ大王またはヘロ
デ一世と呼ばれている人物で、新約聖書の中に記されているヘロデ家の中では一番知られている人
物です。新約聖書で他にヘロデと呼ばれているのは、ヘロデ大王の 4 番目の妻の息子でヘロデ・アンテ
パス(ルカ 3:1/マタ 14:1-12/ルカ 23:7-12)、次に、ヘロデ大王の 3 番目の妻が産んだ息子でヘロデ・ピリ
ポ(ルカ 3:1)、更に、ヘロデ大王の 4 番目の妻が生んだヘロデ・アケラオがいます(マタ 2:22)。また、ヘロデ
大王の孫に当るヘロデ・アグリッパ 1 世がいます(使 12)。最後に、ヘロデ大王のひ孫に当るヘロデ・アグ
リッパ 2 世がいます(使 25:13、26:1)。福音書でこのヘロデ大王が記されているのは、このルカ 1:5 とマタ
イ 1:1-22 だけですが、イエス・キリストの誕生に関して起こったいくつかの出来事で大きく関わったの
がこの王です。
●イタリア・ナポリ近郊にあった古代都市で、紀元後 79 年のヴェスヴィオ火山噴火による火砕流によ
って地中に埋もれた事で有名な都市がありますが、おぼえておられるでしょうか?その都市の名前は
ポンペイです。ローマの軍人であり政治家で、ローマの帝政の基礎を築いた人物に、ラテン語でユリウス・
カイザル、英語でジュリアス・シーザーがいます。実は、そのカイザルがそのポンペイと戦っていた時の事です
が、アンティパテルという名前のヘロデの父親が、その戦い後半で、自分の命の危険を冒してもカイザルを
支えたのでした。その恩に報いて、カイザルは、アンティパテルをユダヤの行政官に任じたという経緯があ
りました。
●その命を受けて、アンティパテルは、25 歳の若造の息子ヘロデ(後のヘロデ大王)をガリラヤの行政官に
任命したのです。ヘロデが着任すると間もなく、彼が山賊(当時のテロリスト)のリーダーとその一味を退治し
た事で、ガリラヤのユダヤ人たちとローマの役員たちから好評を博します。ヘロデの父親が亡くなって後に、東
方のパルティア王国がパレスチナを侵略します。それで、ヘロデは一旦ローマに逃げます。そして、そこで
オクタビアヌスとアントニー並びにローマの元老院の支持を受けて、ヘロデがユダヤの王に任じられま
す。ローマの助けのもと、ヘロデは、パルティア人たちをパレスチナから追放して彼の王国を築き、紀元
前37年に、誰もが認める支配者として王の地位を確立したのでした。 ―2―
イ)ヘロデ王の人気取り政策
●前回のメッセージで語りましたように、ヘロデはユダヤ人ではありませんでした。エドム人です。イスラエ
ルとは敵対関係にあった民族の血を引いています。そのような自分の血筋のゆえに、ヘロデはユダヤ
人たちから人気を得ようとして働き掛けます。彼がした事は、まず 400 年の中間時代にユダヤを支配
していたユダヤ人である誉高いハスモン王朝の血と富を引き継ぐマリアンメという女性と結婚します。
ヘロデは彼の得意とする外交上また行政上の手腕を発揮し、またその雄弁振りも役立ってユダヤ人
に対して自分をアピールしていきます。彼はまた公共事業にも通じており、まずは神殿の再建を手掛けま
す。その神殿は、イエス様の公生涯の間も続けられていた建築作業です。また、カイザリヤには港を建設しま
す。そしてまた、サマリヤの町を復興させ、更には目を見張るような難攻不落の要塞であるマサダを死海
の近くに建設しました。ヘロデの離宮(別荘)として建設されたこの要塞は、2011 年に文化遺産として登
録されている程です。聖書の話は架空の話ではありません。真実で、現代にもつながっているものです!
●彼のユダヤ人に対する行政サービスはまだ続きます。もっとユダヤ人からの人気を博するために、彼は、税
金を二分の一に下げます。また、紀元前 25 年にひどい飢饉がイスラエルを襲いましたが、その時、ヘロデ
は王宮の金製品を溶かして、それで貧しい人々の食費に当てました。そのようにして、ヘロデの人気は
益々上昇し、ヘロデを特別に支持するユダヤ人たちによってヘロデ党と呼ばれる政治党派が結成されまし
た(マタ 22:16/マコ 3:6、12:13)。パリサイ派やサドカイ派のように、このヘロデ党もイエス・キリストに対
する敵対心を持っていたグループでした(マコ 12:13)。
3)ヘロデ王の暗闇の側面(マタイ 2:16-18)
●ヘロデのこのような業績にもかかわらず、彼には恐ろしい闇の側面がありました。彼は、冷酷で、
獰猛で、残忍で、激しい嫉妬心があり、病的な誇大妄想があり、誰かが自分の権力を奪うのではな
いかという事を常に恐れていました。彼の残虐性や血に飢えた性質は、いたる所で見受けられました。
彼は、まず妻を、妻の兄弟を、妻の母を、そして数名の自分自身の息子たちを殺害しています。
●彼の野蛮な残虐性は、ある特定の事件でその頂点に達します。それは、東方の博士たちがエルサ
レムを訪れ、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東
のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」(マタ 2:2)という言葉を聞いた時でした。
彼は、自分以外に王が誕生して自分の王位を奪い取る事に大きな恐れを抱き、博士たちから聞い
たキリスト誕生から逆算して、「ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子を一人残らず殺させ
(た)」(マタ 2:16)のでした。もう王位を終えるという高齢に達していても、彼の嫉妬心や残忍さは
人の想像を超えるものがありました。ですから、この救いの物語が始まる時には、ヘロデの支配が既
に終焉を迎えていた事を示してもいました。
[2]ザカリヤ夫妻の義認と聖化(ルカ1:5b-7)
1)ザカリヤの務め、エリサベツの先祖(1:5b)
―ザカリヤの務め―
―3―
●それでは、第二ポイントに進みましょう。ザカリヤ夫妻の義認と聖化です。その一番目に、ザカリヤの務
めそして次にエリサベツの先祖について取り扱って行きましょう。『最も偉大な生涯の物語』の登場人物の
配役(キャスト)が、突然 5 節の前半部分で、傲慢なヘロデ王から謙虚な「ザカリヤという祭司」に代わっ
て行きます。「ザカリヤ」という名前には、「神はあなたを覚えておられる」という意味があります。このザカリヤ
とエリサベツの物語は、実にその名前の意味そのものを具現化して行きます!「ザカリヤ」は、イスラエ
ルにいる何千という祭司の中の一人です。ザカリヤは、ユダヤの中でも人里離れた「山地にある・・・町」(ルカ
1:39)で祭司の務めをしている無名の人物でした。
●祭司であるという事は、人々へ神を提示すという役割を持っていました。それは、神聖な務めであり、
敬意を払われる立場にありました。旧約の時代に、祭司でない者が祭司しか入れない所に入るなら「死な
なければならない」(民 18:7)と定められる程でした。祭司は、イスラエルという神政国家(神との契約によっ
て治められる国)において、神の支配を実行に移す代理人でした。彼らは人々を教え、人々に御言葉を
解釈して伝え、人々に助言を与え、また人々を裁き、そのようにして神を人々にもたらすという尊い務め
でありました(民 5:14-14/申 17:8-13、21:5、33:8、10/マラ 2:7)。
●また、もう一つの祭司の神聖な務めは、神殿において、人々の罪のために犠牲の捧げ物を神に捧げ
る事によって、人々を神に近づけるというものがありました(出 29:10-19/レビ 4:13-20/2 歴 29:34、35:
11)。旧約時代、数千人いる祭司の中から 26 名程が選ばれ、一人一週間のエルサレム神殿での務
めを年に二回行うという当番制が確立していました(1歴24章)。それで、その務めに選ばれた祭司は、そ
の当番が回って来ると、自分の住んでいる地方での務めを離れて、年に二回神殿での務めを行わなければ
なりませんでした。この『最も偉大な生涯の物語』の始めに、ルカは、エルサレム神殿での二回の内の一つ
の当番をしていたザカリヤを登場させています。
―「アビヤの組の者」―
●5 節で、ルカは、祭司ザカリヤが「アビヤの組の者」であると記しています。「アビヤの組」という組み分けが、
そもそもどこからきているのかを知る必要があります。第一歴代誌によりますと、ダビデ王と祭司アヒメレクそ
して祭司ツァドクの三名が、祭司職を 24 の組に分けて組織立てたという事が分かります(1 歴 24:4-19)。
その八番目に「アビヤ」(1 歴 24:10b)という名前が出てきます。しかし、バビロン捕囚の後は、24 組から
たった 4 組しかユダに戻って来る事ができませんでした(エズ 2:36-38)。その戻って来た 4 組の中には、
「アビヤの組」はありませんでした。ところが、これまでの祭司職の伝統を維持したいという事で、戻って来た
4 組から元々の数の 24 組を作り上げて再編成したのでした。それゆえ、ザカリヤ自身は祭司「アビヤ」の
家系ではなかったと考えられますが、その名前を受け継いだ組の中で祭司として仕えていたのです。
―エリサベツの先祖―
●祭司の結婚相手は、イスラエルの女性で且つ処女でなければならないという規定がありました(レビ 21:7/
エゼ 44:22)。しかし、ザカリヤはその規定の更に上を行き、大祭司であった「アロンの子孫」である女性を
結婚相手として選びました。その女性の名前は「エリサベツ」でした。その名前は、「神は誓いである」という
意味があります。(続く)
―4―
神が誓われた事は全て真実であり、神はその誓いを忠実に果たされる素晴らしさお方なので、たた
えられるという意味があります!この名前の意味も、ザカリヤとエリサベツの物語の中に具現化さ
れます!大祭司アロンの子孫の中で条件を満たした男性は、全てが行く行く祭司となりました。それゆえ、
大祭司アロンの血を引いたこのエリサベツは、祭司職がどういうものであるのかを子どもの頃から見ききしてお
りよく知っていました。そういう意味で、ザカリヤ夫妻というのは、これから奇蹟的に生まれて来るバプテ
スマのヨハネにとっては、実にピッタリの両親となるのです!
2)ザカリヤとエリサベツの義認(1:6a)
―暗闇の中におけるザカリヤとエリサベツの輝き―
●二番目のポイントですが、ザカリヤとエリサベツの義認についてです。前回のメッセージは、『義の太
陽が夜明け前に上る!』という主題で取り次ぎましたが、救い主が来られる時代はまさに夜明け前の暗
闇でした。祭司を含めパリサイ人や律法学者たちは偽善に満ち、自分たちが勝手に解釈した律法を民
衆に押し付け、神を真に礼拝するというところからは、はなはだ遠く離れていた者たちでした。それは、
イスラエルが全く希望のない 400 年間の暗黒時代の真っ只中にある事を示していました!
●そのように霊的に暗黒という状況下で、6 節の前半で、祭司ザカリヤ夫妻はどういう者たちであっ
たでしょうか?彼らは「ふたりとも、神の御前に正し(い)」者たちであった、とルカは伝えています。イエ
ス様ご自身が厳しく非難されたこれら宗教指導者たちとは違って(マタ 6:2、5、16、23:13-29/
ヨハ 5:44)、彼ら二人は人の前にではなく、「神の御前に正し(い)」人たちでした!逆に、当時の宗
教指導者たちは、人の前には自分たちを正しく見せ、人々からの評判を得、神の前では偽善者た
ちでした!
●「神の御前に正し(い)」という事をどのように理解したらいいのでしょうか?人は元々生まれながら
にして正しい人はいません!人はどうしたら「神の御前に正し(い)」とされるのでしょうか?その答えは、
信仰によってです!旧新約聖書を通していつもそうなのですが、神は、贖われた者を信仰によって
「正し(い)」者として下さる、信仰によって義として下さるのです!信仰の父と呼ばれるアブラハムに
ついては、「彼は主を信じた。主はそれを彼の義と認められた」(創 15:6)と明記されています!「義人
は信仰によって生きる」(ロマ 1:17)のです!
―ザカリヤとエリサベツの信仰/重要!―
●ザカリヤとエリサベツは、まことの生ける神と旧約聖書に記された御言葉の啓示を信じていまし
た!(使 24:14)また、彼らは神の律法は正しく真実なものとも信じていました!(詩 19:7-8/ロマ 7:
12)。しかし、自分たちはその律法を完全に守る事ができなかったという事も知っていました!(使
15:10/ロマ3:20、8:7/ガラ2:16、3:11、24)ザカリヤとエリサベツは、自分たちが正しい律法の基準に
達する事ができない者だと分かっていたと同時に、自分たちは哀れみと恵みと愛に富んでおられる
神を信じて悔い改める必要があるという事も知っていました!(ヘブ 2:4/ルカ 18:13-14)そのような彼
らに対して、神は赦しをお与えになりますし(詩 130:3-4/イザ 1:18/ダニ 9:9/ミカ 7:18-19/使 10:43)、
神は彼らの罪を彼らに負わせません!(詩32:1-2/ロマ8:33-34、3:25-26、4:3、9) ―5―
●赦しの基盤となるものは、イエス・キリストを信じる全ての者のために払われた犠牲の死です!(イ
ザ 53:6、10-12)ゆえに、神は悔い改めた罪人をご自分の義で覆って下さるのです!預言者イザヤが、
何世紀も前にその真理を語っています。「わたしは主によって大いに楽しみ、わたしのたましいも、わたしの神
によって喜ぶ。主がわたしに、救いの衣を着せ、正義の外套をまとわせ(た)」(イザ 61:10、53:4-6)か
らでした!
●ザカリヤとエリサベツは、背教の渦巻くイスラエル国家の只中で、残された敬虔なユダヤ人信仰
者の模範として輝いていました!やがてキリストの死によって成し遂げられる新しい契約の約束が
現実のものとなりますが、その恵みの約束を信じる信仰によって、彼らは「神の御前に正し(い)」者
と宣言されていました!
3)ザカリヤとエリサベツの聖化(1:6b)
●三番目のポイントですが、6 節の後半のザカリヤとエリサベツの聖化です。彼らは単に義とされただ
けではなく、聖なる者とされ、「主のすべての戒めと定めを落度なく踏み行っていた」のです!神が
信仰者を義とされたに時、神はまたその時に、その信仰者を聖なる者とします!(1 コリ 1:30、6:11)
義認と聖化は密接に結びついています!宗教改革者であるカルバンは、次のように語っています。「キ
リストは・・・人をまた聖なる者とする事無しに、誰をも義とする事をしません」※1、と!
●ザカリヤとエリサベツが主の前に「落度なく」生きていても、それは彼らには罪がないと言っている
のではありません!彼らは救われた罪人です。しかし、彼らの歩みは、神の聖なる律法に従うという姿
勢で一貫していました!(申 30:8-10/ヨシ 1:8)それは、丁度ヨブのように、「潔白で正しく、神を恐れ、
悪から遠ざかっていた」(ヨブ 1:1)彼らの信仰姿勢を表していました!
4)ザカリヤとエリサベツの苦悩と失意(1:7)
―ザカリヤとエリサベツの不妊という苦悩―
●7 節の前半に進みましょう。今回のメッセージの最後の四番目のポイントですが、神はザカリヤとエリサ
ベツを「正し(い)」者とし見ておられるのですが、それとは裏腹に、人々はそうは見ていませんでし
た!悲しい現実として、「エリサベツは不妊の女だったので、彼らには子(ども)が」ありませんでした。
ユダヤ人たちは「子どもたちは主の賜物、胎の実は報酬である」(詩 127:3)と捉えていますし、また「主は子
を産まない女を、子をもって喜ぶ母として家に住まわせる」(詩 113:9)とも記されています。それで、ユダヤ
人の多くが、結婚しているにもかかわらず神が子どもを授けないのは、その親が罪を犯しているから
ではないかという疑問を持っているのです。それは丁度、生まれつき盲人を見た弟子たちが、「彼が盲目
に生まれついたのは、だれが罪を犯したからですか。この人ですか。その両親ですか。」(ヨハ 9:2b)とイエス様
に質問したのと同様です。ユダヤ人社会においては、子どもがいないというのは、特に既婚の女性に
とってそしてまたその夫にとっても、恥辱という物凄く辛く困難な重荷を負わされるのでした。旧約
聖書に記されているラケル(創 30:1-2、23)やハンナ(1 サム 1:4-11)の例は、それを如実に示しています。
―6―
―ザカリヤとエリサベツの老化という現実の失意―
●7 節の最後の部分ですが、ザカリヤとエリサベツにとっての状況というのは更に絶望的でした。なぜ
なら、「ふたりとももう年をとっていた」がために、人間的に子どもを宿すという事は不可能であったか
らです。神の前では「正し(く)」あったのですが、人々の前では、彼らの結婚生涯を通して子どもがい
ないという恥辱の中をずっと生きて来たのでした。
●しかし、ここで押えておかなければならない点があります。エリサベツの不妊は、彼女と彼女の夫の罪に
対する神の裁きであると考えるのは明らかに間違っている事です(ヨハ 9:1-3)。ルカがここで強調し
ているのは、彼らが聖なる者とされているという点です!彼らの置かれた環境や状況というものは、
不妊という事を含め、神によって主権的に定められたものでした!彼らが正しい者であったという
事が回りの人々に証明されるのは、神が彼らに息子を授けた時でした!しかも、息子なら何でもいい
というものではなく、救い主の先駆者となるバプテスマのヨハネという息子でした!400 年間における
最初の預言者であり、また旧約時代の最後の預言者でした!そして、その時までに生まれた者の中
で、一番優れた者とイエス様によって賞賛された神の器でした!(マタ 11:11)
【まとめ】 それでは、今回のメッセージのまとめをしましょう。
●聖書を通して示される神のご計画は、どんな最悪な状況下においても、常に希望の光が灯され
ています!決して失望に終わらないのです!常に、信仰者へ希望を与えています!もしあなたが
闇の中に置かれたとしても、そこには必ず神が灯してくれる希望の光があります!苦悩と失意は、
神の喜びと希望に取って変わるのです!
【適 用】 それでは、今回のメッセージを私たち自身に対して適用しましょう。
●いかがでしょうか、あなたの問題や悩みの中に、神の希望の灯は見えますか?あなたの苦悩と失意
が、神の喜びと希望に必ず変わるのだという事を信じていますか?あなたは、暗闇の中に希望があ
るという福音を伝える準備はできていますか?
●逆に、現在、特に問題や悩みはなく、苦悩も失意もないという人はいませんか?問題がないという事に安住して、あなたが成すべき大切な事を見逃してはいませんか?何の問題もないという中で、
あなたの心に隙ができ、悪魔の攻撃にさらされる危険性はあませんか?問題のない時に、他者に心
を配る事をしていますか?
【締めの御言葉】
■光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった(ヨハネ1:5)。
■わたしは、世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持
つのです(ヨハネ8:12)。
[参考文献]
※1 ジョン・マッカーサー、『マッカーサー新約注解書/ルカの福音書 1-5』(ムーディー出版、2009)(John MacArthur,
The MacArthur New Testament Commentary, Luke 1-5, The Moody Bible Institute of Chicago, 2009,
p.25) ―7