ルカの福音書講解説教(4)/メッセージ原稿/『ザカリヤへの神の啓示』(その 1)/2016.04.10
『義の太陽が夜明け前に上る!』
―最も偉大な生涯の物語の歴史的背景ー
《ルカ 1:5-14、18-25/今回は 1:5a》

【序 論】
―歴史における神の主権/前回のメッセージの復習―
●前回のメッセージで、私たちはルカが神学者であるという事を学びました。神学者として、ルカは、この
人類の歴史における神の主権を理解しておく事の重要性を私たちに教えていました(ルカ 22:22/使 2:
22-24)。宗教改革者たちの表現を借りますと、「この天地に神の主権が及ばないところは 1cm四方も
ない」という事です!もし、この天地に神の主権が及ばないのでしたら、この天地はたちまち崩壊し
てしまいます。身近な例を挙げて説明しますと、沸点に達するとお湯が沸くとか、氷点に達すると水が
氷るとか、太陽が規則的に上りまた沈むとか、新月・半月・満月が規則的に見られるとか、それら全て
が正しく機能しているのは主の主権が及んでいるからなのです!それが自然だからという事ではな
く、神が主権を持ってこの天地に働き掛けておられる事により、自然の法則が有効に働く事ができ
るのです!そして、その中でも特に、イエス・キリストの十字架と復活という救いの御業も、同様に神
の主権によって既に計画されていた事が実現に至ったものであるとお伝えしました。
―闇を突き刺す神の光/今回のメッセージの方向―
●今回のメッセージから、いよいよ『最も偉大な生涯の物語!』が始まります!その救いの物語の最初
のメッセージ主題は、『義の太陽が夜明け前に上る!』です。この世界は、その中にある一つひとつの
国家に対して、またその国家の中に住んでいる個人に対して、闇の力が絶えず働いています。『最も
偉大な生涯の物語!』を始めるに当り、神がルカを通して最初にお伝えになるメッセージは何なので
しょうか?神の御言葉とその解き明かしに心を向ける事にしましょう。今回のメッセージの流れは下記の通り
です。
【全体のアウトライン】
『ザカリヤへの神の啓示』
◎序論/義の太陽が夜明け前に上る!/今回
[1]最も偉大な生涯の物語の時代的背景(ルカ1:5a)/今回
[2]ザカリヤ夫妻の義認と聖化(ルカ1:5b-7)/次回
[3]ザカリヤの祭司としての栄誉ある任務(ルカ1:8-10)/次回
[4]ザカリヤへの神の預言の啓示(ルカ1:11-14)/次々回
[5]ザカリヤの不信仰に対する神の叱責(ルカ1:18-25)/次々回
―1―
【今回のアウトライン】
◎序論/義の太陽が夜明け前に上る!
1)イスラエルに見られる盛衰の歴史
2)イスラエルの暗闇の現状(ローマ 10:2-3)
3)イスラエルの望み、旧約聖書の約束(ルカ 1:78-79/マラキ 4:2、3:1)
ア)「義の太陽」が夜明け前に上る(マラキ 4:2)
イ)「義の太陽」の前に「使者」が遣わされる(マラキ 3:1)
[1]最も偉大な生涯の物語の歴史的背景(ルカ1:5a)
1)ヘロデ(1:5a)
2)ユダヤの王ヘロデ(1:5a)
ア)ヘロデ王の背景
イ)ヘロデ王の人気取り政策
3)ヘロデ王の闇の側面(マタイ 2:16-18)
【本 論】 それでは、今回のメッセージの本論に入りましょう。
◎序論/義の太陽が夜明け前に上る!
1)イスラエルに見られる盛衰の歴史
●最も偉大な生涯の物語の始まりがどういう時代であったのかという事が、5 節の冒頭のわずかな
言葉によって凝縮されて示されています。それは、「ユダヤの王ヘロデの時に」という短い表現によってで
す。「ユダヤの王ヘロデ」と記されていますが、「ヘロデ」はユダヤ人ではありません。彼は、エドム人です。
エドム人と言えば、エサウの子孫で、ヤコブの子孫のユダヤ人にとっては長年にわたって敵対関係にある民族
です(民 20:14-21/1 王 11:14-22/2 王 14:7/2 歴 25:5-16/詩 137:7/他)。ユダヤ人が敵対民族の
血を引く王によって支配されているという事を物語っています。このヘロデの後ろ楯となっているのがロ
ーマ帝国ですので、イスラエルはローマの支配下に置かれている事を意味しています。イスラエルにとって
は不本意な形で占領されているという事を物語っています。
●イスラエルは、救い主が来られる時にだけ外国による支配を受けていたのではありません。イスラエルの
歴史と言えば、祝福と呪い、信心と背教、従順と反抗の繰り返しです。イスラエルの祖先に当るアブラハ
ムが神によって召されてからユダヤ民族は形成されるのですが、救い主が来られる時のローマ支配に至る
まで盛衰を繰り返しながら深い闇に陥っていました。その間の浮き沈みを振り返ってみますと、それは、
イスラエルがエジプトに於ける 430 年間の奴隷生活を送るという事から始まります。その後、40 年にわた
って荒野に於ける放浪生活を送ります。そして、それから約束の地であるカナンの地を征服してそこに居
住して国家を築きます。その地に於ける士師の時代は混沌としていました。
―2―
●その後のダビデ王とソロモン王の時代に、イスラエル国家の権力と栄光とは頂点に達します。その後
は国が南北に分裂し、十部族からなる北王国がアッシリヤ帝国に捕囚の身として連れて行かれて国
が崩壊します。一方、二部族からなる南王国はバビロンに捕囚の身として連れて行かれから 70 年後に祖
国の地に戻って来る事ができました。異邦人による支配の頂点の期間が、救い主が来られた時代で、
イスラエルの人々が帝国ローマに服従させられている時でした。
2)イスラエルの暗闇の現状(ローマ 10:2-3)
●一方、イスラエルが霊的にどのような状況であったのかを知る事は、救い主の到来を理解する上
で重要です。まず、旧約聖書の最後の書巻はネヘミヤ記で、紀元前 424 年から 400 年の間に書か
れました。それから 400 年という沈黙の期間が過ぎてから、救い主イエス・キリストが誕生されました。
その 400 年という期間を、旧約聖書と新約聖書の間の中間時代と呼んでいます。その期間は、一人の預
言者も現れず、一言の神のお言葉も与えられず、神からの奇蹟も行われませんでした。一言で言い
ますと、神からの啓示のない時代でした!また、旧約聖書の最後の預言者はマラキで、旧約最後の
預言書を記しました。このマラキ以降、神の言葉が預言者から人々に語られる事はありませんでした。
このマラキから約 400 年間の時が経過するまで、神のお言葉がなかったのです。神の御声がないと
いう事ほど、闇の時代はありません!
●そこで、マラキ書に目を留める事にしましょう。救い主が生まれる約400年前から、既に深刻な霊的
闇がイスラエルを覆っていたという事は明らかでした。ご一緒に、下記のマラキ書の聖書箇所を開きな
がら、イスラエルの霊的状況把握して行きましょう。
■1:6 子は父を敬い、しもべはその主人を敬う。もし、わたしが父であるなら、どこに、わたしへの
尊敬があるのか。もし、わたしが主人であるなら、どこに、わたしへの恐れがあるのか。・・・1:7
あなたがたは、わたしの祭壇の上に汚れたパンをささげて「主の食卓はさげすまれてもよい」
とあなたがたは思っている(1:6-7)。
■2:7 祭司のくちびるは知識を守り、人々は彼の口から教えを求める。彼は万軍の主の使いであ
るからだ。 2:8 しかし、あなたがたは道からはずれ、多くの者を教えによってつまずかせ、レビと
の契約をそこなった。2:9あなたがたがわたしの道を守らず、えこひいきをして教えたから
だ。2:11 ユダは裏切り、イスラエルとエルサレムの中では忌まわしいことが行われている。ま
ことにユダは、主の愛された主の聖所を汚し、外国の神の娘をめとった(2:7-11)。
■3:14 あなたがたは言う。「神に仕えるのはむなしいことだ。神の戒めを守っても、万軍の主の前
で悲しんで歩いても、何の益になろう。 3:15 今、私たちは、高ぶる者をしあわせ者と言おう。悪
を行っても栄え、神を試みても罰を免れる」と(3:14-15)。
この最後の言葉は、特に皮肉が込められた辛辣な言葉です!聖書を教えそして礼拝を導き、人々
を神に近づける重要な役割を担っている祭司たちなのですが、彼らがまず霊的に腐敗して堕落し、
他の神々を礼拝して闇の中にいるという霊的状況です。それゆえ、当然、神の民は腐敗して堕落し、
他の神々を礼拝して闇の中にいるのです。彼らは旧約聖書の教えに対して背を向けています。
―3―
●彼らの信仰は形式的です。形式的に聖書を教え、形式的に捧げ物を捧げ、形式的に礼拝をし、そ
れには全く心が伴っていませんし、いい加減です。神の正しさや聖さに対する恐れや尊敬の念もあり
ません。彼らの信仰は空しく、彼らの宗教は金儲けのための手段でした。それは、主の厳しい叱責を
招くものでした。
●旧約聖書をはじめ、新約聖書も同様に一貫してそうなのですが、「正しい人はその信仰によって生き
る」(ハバ 2:4/創 15:6/ロマ 4:3、9、20-22/ガラ 3:6)というのが救いの中心メッセージでした!しかし、
神の民はこの旧約聖書の真理を捨て去っていました!形式的であれ宗教儀式をこなしている事で
救われる、自分の良い行いが神の義に達する事は決してないにもかかわらず、自分たちの行いを良
いものと決め、その行いで救われると思い込んでいました。彼らには罪の自覚がありません。そして、
神に頼って信仰し、神から義とされるという救いの道を選びませんでした。
●そのような救いに対する考え方は、救い主が来られた時代に、宗教指導者として幅を利かせてい
たパリサイ派や律法学者たちにも見られる救いの理解の仕方でした。自分の義を主張する者たちの
考え方に見られるものでした。そのような誤ったイスラエルの人々の救いの考え方に対して使徒パウロは
次のように述べていますが、的を射た鋭い指摘です
10:2 私は、彼ら(ユダヤ人)が神に対して熱心であることをあかしします。しかし、その熱心は知識に基
づくものではありません。 10:3 というのは、彼らは神の義を知らず、自分自身の義を立てようと
して、神の義に従わなかったからです(ロマ 10:2-3)。
●それゆえ、神は、このようなユダヤ人たちの偽善に対して、ご自分の沈黙を貫かれたのです!神
は、400 年間にわたって、預言者や啓示や奇蹟をもってご自分の民とかかわる事をしなかったので
す!そのような深刻な背教の中で、その霊的暗闇の中で、真実な信仰者たち、神によって残された
者たちを支えたのはどういう希望であったのでしょうか?それが、次のポイントです!
3)イスラエルの望み、旧約聖書の約束(マラキ 4:2、3:1/ルカ 1:78-79)
ア)「義の太陽」が夜明け前に上る(マラキ 4:2)
●マラキ 4:2 には、その希望が何であったのかを記しています。「しかし、わたしの名を恐れるあなた
がたには、義の太陽が上り、その翼には、いやしがある。あなたがたは外に出て、牛舎の子牛のよう
にはね回る。」、と!「義の太陽」とは誰を指しているのでしょうか?それは、救い主である主イエス・
キリストです!このキリストが、ご自分を救い主として信じる全ての者を罪の闇の中から解放して下
さるという約束です!太陽が闇夜を明るくさせるようにです!
●イザヤも、その事を預言して次のように語っています。「やみの中を歩んでいた民は、大きな光を見た。死の陰の地に住んでいた者たちの上に光が照った。」(9:2)、と!この預言の言葉は、そのままマタイの
福音書に引用されています(4:16)。そして、ルカ一章で登場する祭司ザカリヤも、間違いなくこのマラ
キの預言を知っていた事でしょう。それゆえ、ザカリヤ自身も、ルカ 1:78-79 で、聖霊に満たされて次のよ
うに語預の言葉を語っています。(続く)
―4―
「1:78 これはわれらの神の深いあわれみによる。そのあわれみにより、日の出がいと高き所からわれらを
訪れ、 1:79 暗黒と死の陰にすわる者たちを照らし、われらの足を平和の道に導く。」、と!そして更
に、救い主としてまた暗闇からの解放者として来られるお方が神ご自身であるという事が、マラキ
3:1b の預言の言葉によって明らかです!「あなたがたが尋ね求めている主が、突然、その神殿に来
る」と記されています!キリストが神ご自身であるという事を示しています!これは、部分的に初臨の
キリストを指していますし、また最終的には、キリストの再臨で完全に成就します!
●このように、旧約聖書が、最も前向きで且つ最も希望を与えてくれる約束で閉じられている事が
分かります!「義の太陽」であるキリストが「上り」、その栄光の光は人々を飲み込んでいる霊的な暗
闇を照らし、人々をそれから解放するのです!
イ)「義の太陽」の前に「使者」が遣わされる(マラキ 3:1a)
●救い主が来られる事は、マラキ書においては約 400 年前から預言されていた事ですが、その預言には主
のもう一つの約束が含まれています!先程、マラキ 3:1 の後半で、「主が、突然、その神殿に来る」とい
う預言の御言葉を見ましたが、同じ節の前半には、「見よ。わたしは、わたしの使者を遣わす。彼はわたしの前に道を整える
。」という預言の言葉が記されています!この「使者」の到来は、神がその民に対し
て取っておられた長い沈黙の期間に終止符を打つ合図となります!彼のメッセージは、イスラエル
の霊的な暗闇を照らす光の前触れとなります!彼は、人々が長い間待っていた「まことの光」(ヨハ
1:9)の到来を高らかに宣言する者となります!救い主が到来するのが間近に迫っているという事、
そして人々に対して、その救い主を受け入れる霊的準備をするよう呼び掛けるのでした!(マコ 1:4/
ルカ 1:16-17、76-77)
●ルカが、救いの壮大な物語を記すに当って、その先駆者であるバプテスマのヨハネの物語を記す
事は非常に重要でした!これから、なぜバプテスマのヨハネを加える事がそんなにも重要なのか、そ
の 5 つの理由をお伝えしましょう。一番目に、バプテスマのヨハネは、旧新約聖書をつなげる役割を果
たしています!旧約聖書と新約聖書は、二つの異なった宗教や二つの異なった救いを教えているの
ではありません!旧約聖書の神は怖く恐ろしい神で、新約聖書の神が優しく愛の神だという事でも
ありません。ある人が、「旧約聖書はユダヤ教で、新約聖書がユダヤ教の新興宗教だと」考えている人もい
たという事を聞きましたが、大きな誤解です。そうではなく、むしろ、旧新約聖書は神から与えられた一つ
にまとめられた啓示の書で、まことの生ける神そしてその独り子なる主イエス・キリストを信じる信
仰によって罪が赦されるという贖いの希望を提供している書物です!
●二番目に、バプテスマのヨハネは旧約聖書の預言の成就を表しています!この成就によって、預
言された言葉が正確であるという事を示していますし、更には、旧約聖書が一つの流れで新約聖
書につながっているという事を示しています!そして、新約聖書を旧約聖書と同じように神の御言
葉であると位置付けています!
―5―
●三番目に、前述しましたが、それは、バプテスマのヨハネを通して神はご自身の数世紀にわたる長
い沈黙を打ち破られた、という事を示しています!御使いガブリエルとバプテスマのヨハネの出現
は、この 400 年の中で、神の最初の超自然的な啓示であるという事を示しています!
●四番目に、バプテスマのヨハネの誕生が、奇蹟そのものであると示しています!この 400 年の中
で、神の最初の奇蹟です!ヨハネの両親であるザカリヤとエリサベツは、アブラハムとサラのように
子どもを産める年齢を遥かに超えていたからです。そして、更にその事実は、それよりもなお奇蹟的
な主イエス・キリストの処女降誕の前触れとなっています!
●最後の五番目に、最も重要な点ですが、バプテスマのヨハネの物語は、彼が神によって預言された
救い主の先駆者であるという事を示しています!それは、いったい何を意味しているのでしょうか?
それは、イエス様に関する証しをしたヨハネの証しは、イエス様が実に正真正銘の救い主であるとい
う事を証明しています!ところで、バプテスマのヨハネがしたイエス様に関する証しで、最も簡潔な証
しの表現をおぼえておられるでしょうか?それは、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊」(ヨハ 1:29)とい
う証しでした!その証しを含めて、ヨハネがイエス様に関して語った証しは、文字通り正真正銘なも
のだという事なのです!
―歴史家ルカの場面設定―
●優れた歴史家でもあるルカは、ザカリヤに対して、御使いガブリエルが現れてヨハネについて神の
伝言を伝えるという驚くべき出来事を伝える前に、簡潔にザカリヤやエリサベツの背景を記して、ヨハ
ネの誕生とそれ以降のヨハネの物語への設定をしたのでした。
[1]最も偉大な生涯の物語の歴史的背景(ルカ1:5a)
●序論を終えて後に、本論の第一ポイントに移りましょう。第一ポイントは、『最も偉大な生涯の物語』の
歴史的背景です。今回は、この第一ポイントでメッセージを終了します。
1)ヘロデ王(1:5a)
ア)ヘロデ王の背景
●救いの物語の最初の言葉は、「ユダヤの王ヘロデの時に」です。これだけをメッセージするのに、15
分程は掛かるでしょうか・・・?「ヘロデ」は、ヘロデ大王またはヘロデ一世と呼ばれている人物で、新約
聖書の中に記されているヘロデ家の中では一番知られている人物です。新約聖書で他にヘロデと呼
ばれているのは、ヘロデ大王の 4 番目の妻の息子でヘロデ・アンテパス(ルカ 3:1/マタ 14:1-12/ルカ 23:
7-12)、次に、ヘロデ大王の 3 番目の妻が産んだ息子でヘロデ・ピリポ(ルカ 3:1)、更に、ヘロデ大王の 4
番目の妻が生んだヘロデ・アケラオがいます(マタ 2:22)。また、ヘロデ大王の孫に当るヘロデ・アグリッパ 1
世がいます(使 12)。最後に、ヘロデ大王のひ孫に当るヘロデ・アグリッパ 2 世がいます(使 25:13、26:1)。
福音書でこのヘロデ大王が記されているのは、このルカ 1:5 とマタイ 1:1-22 だけですが、イエス・キリストの
誕生に関して起こったいくつかの出来事で大きく関わったのがこの王です。
―6―
●イタリア・ナポリ近郊にあった古代都市で、79 年のヴェスヴィオ火山噴火による火砕流によって地
中に埋もれた事で有名な都市がありますが、おぼえておられるでしょうか?その都市の名前はポンペ
イです。ローマの軍人であり政治家で、ローマの帝政の基礎を築いた人物に、ユリウス・カイザル(ラテン語
&ジュリアス・シーザー/英語)がいます。実は、そのカイザルがそのポンペイと戦っていた時の事ですが、アン
ティパテルという名前のヘロデの父親が、その戦い後半で、自分の命の危険を冒してもカイザルを支えたの
でした。その恩に報いて、カイザルは、アンティパテルをユダヤの行政官に任じました。
●その命を受けて、アンティパテルは、25 歳の若造の息子ヘロデ(後のヘロデ大王)をガリラヤの行政官に
任命したのです。ヘロデが着任すると間もなく、彼が山賊(当時のテロリスト)のリーダーとその一味を退治し
た事で、ガリラヤのユダヤ人たちとローマの役員たちから好評を博します。ヘロデの父親が亡くなって後に、東
方のパルティア王国がパレスチナを侵略します。それで、ヘロデは一旦ローマに逃げます。そして、そこで
オクタビアヌスとアントニー並びにローマの元老院の支持を受けて、ヘロデがユダヤの王に任じられま
す。ローマの助けのもと、ヘロデは、パルティア人たちをパレスチナから追放して彼の王国を築き、紀元
前 37 年に、誰もが認める支配者として王の地位を確立したのでした。
イ)ヘロデ王の人気取り政策
●前述しましたように、ヘロデはユダヤ人ではありませんでした。エドム人です。イスラエルとは敵対関係
にあった民族の血を引いています。そのような自分の血筋のゆえに、ヘロデはユダヤ人たちから人気
を得ようとして働き掛けます。彼がした事は、まず 400 年の中間時代にユダヤを支配していたユダヤ
人である誉高いハスモン王朝の血と富を引き継ぐマリアンメという女性と結婚します。ヘロデは彼の
得意とする外交上また行政上の手腕を発揮し、またその雄弁振りも発揮してユダヤ人に対して自分
をアピールしていきます。彼はまた公共事業にも通じており、まずは神殿の再建を手掛けます。その神殿は、
イエス様の公生涯の間も続けられていた建築作業です。また、カイザリヤには港を建設します。そしてまた、
サマリヤの町を復興させ、更には目を見張るような難攻不落の要塞であるマサダを死海の近くに建設
しました。ヘロデの離宮(別荘)として建設されたこの要塞は、2011 年に文化遺産として登録されていま
す。
●彼のユダヤ人に対する行政サービスはまだ続きます。もっとユダヤ人からの人気を博するために、彼は、税
金を二分の一に下げます。また、紀元前 25 年にひどい飢饉がイスラエルを襲いましたが、その時、ヘロデ
は王宮の金製品を溶かして、それで貧しい人々の食費に当てました。そのようにして、ヘロデの人気は
益々上昇し、ヘロデを特別に支持するユダヤ人たちによってヘロデ党と呼ばれる政治党派が結成されまし
た(マタ 22:16/マコ 3:6、12:13)。パリサイ派やサドカイ派のように、このヘロデ党もイエス・キリストに対
する敵対心を持っていたグループでした(マコ 12:13)。
3)ヘロデ王の暗闇の側面(マタイ 2:16-18)
●ヘロデのこのような業績にもかかわらず、彼には闇の側面がありました。彼は、冷酷で、獰猛で、残
忍で、激しい嫉妬心があり、病的な誇大妄想があり、誰かが自分の権力を奪うのではないかという事
を常に恐れていました。(続く)
―7―
彼の残虐性や血に飢えた性質は、いたる所で見受けられました。彼は、まず妻を、妻の兄弟を、妻の
母を、そして数名の自分自身の息子たちを殺害しています。彼の野蛮な残虐性は、ある特定の事件
でその頂点に達します。それは、東方の博士たちがエルサレムを訪れ、「ユダヤ人の王としてお生ま
れになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにま
いりました。」(マタ 2:2)という言葉を聞いた時でした。彼は、自分以外に王が誕生して自分の王位
を奪い取る事に大きな恐れを抱き、博士たちから聞いたキリスト誕生から逆算して、「ベツレヘムと
その近辺の二歳以下の男の子を一人残らず殺させ(た)」(マタ 2:16)のでした。しかし、この救いの
物語が始まる時には、ヘロデの支配が既に終焉を迎えていた事を示していました。
【まとめ】 それでは、今回のメッセージのまとめをしましょう。
●今回のメッセージの主題は、『義の太陽が夜明け前に上る!』でした!「夜明け前」とは、暗い闇夜を
表していました。また、その闇夜は、ユダヤ人を治める異邦人の支配に表れていました。神は、ご自分
の民であるユダヤ人の背教に対して沈黙し続けておられましたが、その民を見捨てる事はしません
でした!「義の太陽」であるイエス・キリストが、夜明け前の暗闇の中に上ると旧約聖書の最後の預
言書に書き記され、それを「使者」であるバプテスマのヨハネによって宣言されるという計画を進め
ておられました!神は、ご自分の民を決して見捨てる事はなさいません!また、勿論、異邦人であ
る私たちのためにも、救い主を送られるのでした!
【適 用】 それでは、今回のメッセージを私たち自身に対して適用しましょう。
●今いかがでしょうか、世界情勢は・・・?中東には内戦とテロいう闇が覆い、それが欧米に飛び火し
ています。中東の問題は、最終的にはイスラエルというユダヤ人に向かいます。イスラエルはいまだ
に闇が続いています。しかし、主は、携挙によって御自身を信じるクリスチャンを最初に空中に引き上
げて天国へ移され、そして再臨によってユダヤ人を守り助けます!神が全ての闇を払拭する事は、
聖書の御言葉で約束されている事です!状況は予断を許しませんが、神が光を照らして守られると
いう希望を持ち続ける事ができます!
●さて、あなた個人にとってはいかがでしょうか?あなたの苦難の闇は、このお方の光によって照ら
されて払拭される事を信じ、希望と平安の中を歩んでおられますか?あなたの闇は、神の光によっ
て刺し通され、回復と解決へと導かれる事を確信していますか?それでは、祈りの時を持ちましょう。
【締めの御言葉】
わたしは、世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つ
のです(ヨハネ8:12)。
―8