ルカの福音書講解説教(15)/メッセージ原稿/『処女降誕、神の奇蹟!』(その 2)/2016.11.06
『受肉それは測りがたい神秘!』
―「御子は神の栄光の輝き、また神の本質の完全な現れであ(る)」(ヘブル 1:3)―
《ルカ 1:34-38/今回は 1:34-36》
【序 論】
●『処女降誕、神の奇蹟!』というテーマでクリスマスについて学んでいますが、前回は、「処女降誕」に特
にスポットを当てて聖書全体から学びました。処女降誕の教理はキリスト教の土台であり、また重要且
つ不可欠な役割を果たしている教理だという事を学びました!そして、それは下記の四つのポイントに
まとめられていました。
(1)処女降誕は、聖書全般の教理と一致しています!
(2)処女降誕はキリストが神であられるという教理に一致しています!
(3)処女降誕はキリストが人であるという教理に一致しています!
(4)処女降誕は神の恵みの教理と一致しています!
そして、最後に、神・人イエスという処女降誕から生まれる教理が、いつの時代でも異端の教えによ
って絶えず攻撃されて来た重要な教えであったという事を学びました。
●さて、今回はこのテーマの二回目のメッセージで、『受肉それは測りがたい神秘!』と題して聖書を学
びます。副題は、「御子は神の栄光の輝き、また神の本質の完全な現れであ(る)」(ヘブル 1:3)です。神
が人となられるという受肉の神秘性、受肉における聖霊の働き、マリヤの御使いに対する問い掛けと
信仰、そして神の恵みによる取り計らいについて学びます。解き明かされる御言葉に期待を寄せましょう。
メールの全体の流れそして今回の流れは、下記のアウトラインの示す通りです。
【全体のアウトライン】
◎ 序論/処女降誕について/済
[1]マリヤの御使いに対する問い掛け(1:34)/今回
[2]神の聖霊による創造の御業(1:35)/今回
[3]神の励ましのしるし(1:36)/今回
[4]神の全能性(1:37)
[5]マリヤの信仰と従順(1:38)
【今回のアウトライン】
[1]マリヤの御使いに対する問い掛け(1:34)
1)信じるが、理解できない
2)疑うのではなく、説明を求める
―1―
[2]神の聖霊による創造の御業(1:35)
1)聖霊がマリヤに臨まれる(1:35a)
2)いと高き神がマリヤを覆われる(1:35b)
3)マリヤの子は聖なる者そして神の子と呼ばれる(1:35c)
[3]神の励ましのしるし(1:36)
1)しるしはマリヤが求めたのではなく神が与えられたもの(1:36a)
2)親類の不妊の女エリサベツの妊娠の衝撃的な知らせ(1:36b)
【本 論】
[1]マリヤの御使いに対する問い掛け(1:34)
1)信じるが、理解できない
●ルカ 1:30-33 に記されていましたように、イスラエル人が幾世紀にもわたって待ち望んで来た救い主の母
親にマリヤがなるという神の御使いによる驚くべき知らせは(1:30-33)、彼女自身を震えさせましたしまた混
乱に陥れました(1:29)。この御告げの意味する事によって圧倒され、またそれが実際どのように実現
するのかについては不思議に思うと同時に、なぜそれが可能かという質問も湧いて来ました。そこで、
御使いガブリエルに対して、34 節で、「どうしてそのようなことになりえましょう。私はまだ男の人を知りませんの
に」と問い掛けたのでした。
●女性が男性との関わりによって受精する事無しに妊娠出産するという事は、もはや完全にマリヤの想像を
超えていました。御使いが告げた内容は、遥かにマリヤの想像を超えていました。しかし、ここで誤解しては
いけない点ですが、マリヤの御使いへの質問は、祭司ザカリヤの場合(1:18-20)と違って、彼女の疑い
や不信仰から発せられているものではありません!マリヤは、御使いが伝えた通りになると信じて
います!しかし、その御告げがどのように実現するのかについて理解できなかったのです。ですから、
御使いへ質問をして説明を求めたのでした。
2)疑うのではなく、説明を求める
●私たちは、ここで、マリヤの置かれた背景をよく理解する必要があります。それは、旧約聖書の記録が
示していますように、歴史の中で現された神の奇蹟というものは、極端に少ないものでした。特に、マリ
ヤが生まれる前の四百年というのは、旧約と新約の間の中間時代と呼ばれており、神からの啓示もまた
奇蹟も全くなかった時代です。この期間、誰も御使いを見る事はありませんでした。
●再び神の啓示が与え始められたのが、御使いガブリエルが祭司ザカリヤに表れてからです。そして、
ザカリヤの妻エリサベツに関する御告げ通りに彼女は妊娠し、それから 6 ヶ月以上の時が経過し、このマリヤ
に対して同じ御使いガブリエルが現れたのでした。ここで補足説明した方がいいのは、マリヤは恐らく自分に
現れた同じ御使いガブリエルが神殿で務めをしていた祭司ザカリヤに訪れ、その御告げの通りに、その妻エリ
サベツとの間にバプテスマのヨハネが誕生するという預言については全く知らなかったと思われます。(続く)
―2―
36 節で、不妊エリサベツの妊娠をガブリエルから知らされるのですが、その時点までは、恐らくそのニュースは
マリヤには伝わっていなかったでしょう。互いに遠距離に住んでいますし、現代のように郵便制度や電話があ
る訳ではありませんし、伝えようがありません。また、身重な体で「山地にあるユダの町」(1:39)からナザレま
での 100Km以上の旅をして伝える事もまず考えられません。ですから、マリヤは親類の老人エリサベツに
起こっている驚くべき事については知る由がありませんでした。
●話はマリヤへの御告げに戻りますが、その御告げの内容について、マリヤは、自分にとって通常の自然
な妊娠によって子どもが生まれるのではないという事を知る事はできました。すなわち、自分が婚約者
ヨセフと結婚して、救い主を授かるのではないという事は分かりました。マリヤは、自分が結婚前の処
女の時に妊娠するのだという事を御使いが語っているのだという事も理解していました。ですから、彼
女の御使いへの問い掛けは、彼女の疑いから来ているものではないのです。そうではなく、マリヤは御
使いに対して、不可能を可能する手段とは何なのか、その説明を求めたのでした!
[2]神の聖霊による創造の御業(1:35)
1)聖霊がマリヤに臨まれる(1:35a)
●もっと説明して欲しいというマリヤの問い掛けに対して、御使いガブリエルは、35 節の前半に記されていま
すように、「聖霊があなたの上に臨(む)」からだと答えました!ルカの福音書の記述の中で、救い主イ
エス・キリストの誕生において、聖霊なる神の果たされる役割の重要性を示しています!既に学んだ
ところも含めて、聖霊の働きの具体例を追ってみましょう。まず初めに、1:14-16 に目を留めましょう。聖霊
の働きに関して何と記されているでしょうか?バプテスマのヨハネは、父ザカリヤに「1:14・・・とって喜びとな
り楽しみとなり、多くの人もその誕生を喜びます。 1:15 彼は主の御前にすぐれた者となるからです。彼は、
ぶどう酒も強い酒も飲まず、まだ母の胎内にあるときから聖霊に満たされ、 1:16 そしてイスラエルの多くの
子らを、彼らの神である主に立ち返らせます」、と伝えています!1:39-41 では、「1:39 そのころ、マリヤは立
って、山地にあるユダの町に急いだ。 1:40 そしてザカリヤの家に行って、エリサベツにあいさつした。 1:41 エ
リサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、子が胎内でおどり、エリサベツは聖霊に満たされた」とありま
す!そして、2:25-35 において、シメオンという人物の事が記されています。聖霊なる神は、シメオンをど
のように導かれておられたのでしょうか?
2:25 そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい、敬虔な人で、イスラエルの慰めら
れることを待ち望んでいた。聖霊
..
が彼の上にとどまっておられた。 2:26 また、主のキリストを見るまで
は、決して死なないと、聖霊
..
のお告げを受けていた。 2:27 彼が御霊
..
に感じて宮に入ると、幼子イ
エスを連れた両親が、その子のために律法の慣習を守るために、入って来た。 2:28 すると、シメオンは
幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。 2:29 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、みことばど
おり、安らかに去らせてくださいます。 2:30 私の目があなたの御救いを見たからです。 2:31 御救いは
あなたが万民の前に備えられたもので、 2:32 異邦人を照らす啓示の光、御民イスラエルの光栄です。」
2:33 父と母は、幼子についていろいろ語られる事に驚いた。 2:34 また、シメオンは両親を祝福し、
母マリヤに言った。(続く)
―3―
「ご覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がるために定められ、また、反対を
受けるしるしとして定められています。 2:35 剣があなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心
の思いが現れるためです。」
シメオンに聖霊が留まっておられ、聖霊のお告げを受け、聖霊に導かれて行動し、そして聖霊によっ
て預言をしました!マリヤとヨセフが幼子イエス・キリストと共にこれからの生涯を送るに当って、そ
の心をしっかりと神のご計画に沿わせ、神のご計画に据えさせるための霊的準備を導くため、聖霊
によってシメオンは預言を告げたのでした!聖霊の重要で貴重な役割を見る事ができます!
●そして、誕生後も引き続き、聖霊はイエス・キリストの地上生涯とその働きの力の源となりまし
た!その象徴として、ルカ 3:21-22 において、イエス様が「バプテスマをお受けになり、そして祈っておられると、
天が開け、聖霊が、鳩のような形をして」ご自分に下られました。公の場で、イエス・キリストの力の源が
聖霊なる神である事をお示しめしになられました!
●実は、聖霊が、神・人イエスの奇蹟的な受胎を導いておられたという事は何ら驚くべき事ではあ
りません!天地創造の時を振り返ってみて下さい。聖霊は神であられ、この天地の創造をなされたお
方なのです!創世記 1:2 は、次のように伝えています。「地は茫漠として何もなかった。やみが大水の上に
あり、神の霊が水の上を動いていた」とあります!聖霊は、天地創造における創造者です!そして、再
び、今度はマリヤの胎における創造者となられるのです!ですから、福音書おいてもまた聖書の他
のいかなる箇所においても、主イエス・キリストの受胎に関して、人の性的な関与というものがひと
かけらもないという事を私たちに明らかにしています!
2)いと高き神がマリヤを覆われる(1:35b)
―「いと高き神」―
●35 節の前半では「聖霊が」マリヤの「上に臨み」とありました。そして、それの説明をしたばかりですが、聖
霊がマリヤに関わるという事がいったい一番何を強調しているのかが、35 節の中盤に記されています。
それが、「いと高き方の力があなたをおおいます」という言葉に表れています!「いと高き方」という表
現は、31 節にも記されており、前々回のメッセージでも触れたところです。旧約聖書の中で何回も出て
来る表現です(創14:18-20/申32:8/2サム22:14/詩7:17、9:2、21:7、46:4、47:2/イザ 14:14/哀3:
35、38/ダニ 4:17、24、5:18、21)。何を意味した表現でしたでしょうか?それは、神が主権者で、全能
者で、天と地の全てを支配しておられる神である事を意味している表現、「いと高き方」という称号
の持っている意味でした!その支配は、天地創造から千年王国そして新天新地を貫くもので、永遠
の昔から永遠の未来まで限りなく続くものでした!という事はどうなるかと言いますと、神はご自分の
聖霊(ヨブ 33:4)を通してこの天地宇宙を維持されておられる方であり(詩 104:30/コロ 1:16-17)、そ
の聖霊なる神がマリヤの胎の中に救い主の命を創造されるという意味を持っています!
―「おおいます」―
●また、この「おおいます」と訳された言葉は、イエス様の姿が変わられたあの変貌の山で、「光り輝く雲」が
ペテロとヤコブとヨハネの三名を「包(んだ)」と伝えていますが、その「包(む)」という言葉にも訳されている言
葉です。(続く) ―4―
ですから、「おおいます」という言葉は「包む」、「取り囲む」、「取り巻く」という意味があり、比喩的には「影
響を与える」という風に理解する事ができます。何を言わんとしているのでしょうか?それは、聖霊なる
神の創造の影響がマリヤを「おおい」、その胎の中に子どもを造り出したのです!
3)マリヤの子は聖なる者そして神の子と呼ばれる(1:35c)
―「聖なる者」―
●神の創造の奇蹟は、35 節の後半に記されていますように、マリヤから生まれる御子について二つの真実
を保障しています!一つ目が、その子が「聖なる者」であるという事です!この世に生まれるいかな
る子どもとも違います!(ヨブ 15:14、25:4/伝 7:20/イザ 53:6/ロマ 5:12/ガラ 3:22/創 3:6-13)この
世に生まれる全ての子どもは、主イエス・キリストというたったお一人を除いて全て罪人です!私た
ちも含めて。「人がどうして、きよくありえようか。女から生まれた者が、どうして、正しくありえようか」(15:14)、
とヨブ記に記されている通りです!また、ダビデが次のように告白している通りです。「ああ、私は咎ある者とし
て生まれ、罪ある者として母は私をみごもりました」(詩 51:5)、と!ダビデは、自分が私生児(父親が誰か
分かならい子ども)として生まれたと言っているのではなくて、自分が母親の胎の中に宿った時から罪人で
あると語っています!しかし、キリストは常に罪のない神の御子であられました!(2 コリ 5:21/ヘブ 7:
26/1 ペテ 1:19、2:22/1 ヨハ 3:5/ヨハ 8:46)
―受肉それは測りがたい神秘!―
●ある人は、イエス・キリストには罪がないというのはキリストには人間の父親がいないからである、と
いう誤った提言をしています。しかし、聖書には、罪の性質は父親のみから遺伝的に受け継がれるもの
であるという根拠をどこにも記していません。全ての男性と女性は生まれながらに罪人です。なぜな
ら、「アダムにあってすべての人」がその罪ゆえに「死んでいる」(1 コリ 15:22)のは、「ひとりの人」す
なわちアダムの「不従順によって多くの人が罪人とされた」(ロマ 5:19)からだ聖書が伝えているか
らです!別の表現をすれば、私たち人間全ては、最初の人アダムと一緒に罪を犯した者なのです。
●そこで、私たち人間の理解力を遥かに超えた事なのですが、イエス・キリストは完全な人間なので
すが、それにもかかわらず、その受胎以来完全に罪のないお方なのです!そういう説明がどうしてあ
り得るのでしょうか?答えは、それを神の神秘的な御業と言わざるを得ません!神であるキリスト
が人になられるという受肉は、私たち人間にとっては測りがたい神秘の中に包まれている事
なのです!聖霊なる神の成し得る創造の御業です!
―「神の子」―
●マリヤから生まれる御子についての二つ目の真実は、35 節の最後に記されていますように、イエス・
キリストは完全に聖い「神の子」でなければならないという事です!なぜなら、イエス・キリストのご性
質は、父なる神ご自身の聖さと全く同じものであるからです!この「神の子」という麗しい称号は、
イエス・キリストにとってふさわしいものです!まず、イエス様ご自身が、ご自分はその称号にふさわ
しいものである事を語っておられますし(ルカ 22:70、2:49、10:22)、父なる神ご自身もそう語ってお
られますし(ルカ 3:22、9:35)、またサタンでさえもそう語っていますし(ルカ 4:3、9)、悪霊どももそう
語っていますし(4:41、8:28)、そして使徒パウロもそう語っています(使 9:20、13:33)。そのように語
れるのは、皆、イエス様にとってふさわしいものでした! ―5―
●ちなみに悪霊がどう語っているのかを紹介しましょう。「悪霊どもも、「あなたこそ神の子です」と大声
で叫びながら、多くの人から出て行った。イエスは、悪霊どもをしかって、ものを言うのをお許しにならなかった。
彼らはイエスがキリストであることを知っていたからである。」(4:41)、と!ゲラサ地方で、悪霊に憑かれた男
が、「イエスを見ると、叫び声をあげ、御前にひれ伏して大声で言った。「いと高き神の子、イエスさま。い
ったい私に何をしようというのです。お願いです。どうか私を苦しめないでください。」」(8:28)、と!汚れた霊
どもでさえ、救い主イエス・キリストが「神の子」であるという事を明確に捉えているのです!
●新約聖書全体を見ますとこの「神の子
...
」また「神の御子
....
」という称号は、イエス様が第二人格の神
としてまたそのお働きにおいて、物凄い深い意味が込められている表現です!例えば、「王」(ヨハ 1:
49)だとか、「神の御子」を信じない者への「裁き」(ヨハ 3:18)だとか、「復活」(ロマ 1:4)によって公に「神の御
子」として示されただとか、そして「まことの神」であり「永遠のいのち」(1 ヨハ 5:20)を示している事だとか、「神
の御子」という称号には実に数々の重要な意味が込められている表現なのです!しかしながら、この
ルカの福音書 1 章では限られた意味で使われています。それは、イエス・キリストが人の形を取られてこ
の世界に来て下さった「神の御子」であるという事です!ヘブル人への手紙の著者は、次のように実に
端的にまた麗しく表現しています。「御子は神の栄光の輝き、また神の本質の完全な現れであ(る)」
(1:3/ヨハ 1:14/ピリ 2:6)、と!
[3]神の励ましのしるし(1:36)
1)しるしはマリヤが求めたのではなく神が与えられたもの(1:36a)
●36 節の前半ですが、最後のポイントに差し掛かって来ました。マリヤは、自分から疑いを取り除いて
下さいと言ってしるしを求めたのではありませんでした。そうではなく、恵み深い神ご自身がマリヤの
信仰を強めるためにしるしを与えて下さったのです!その神のしるしとは、マリヤの年老いた「親類のエ
リサベツ」に関わる事でした。この「親類」という言葉は、それが親族の女性を指すというようなはっきりとしたも
のではありません。また、「親類」と言っても、マリヤとエリサベツがどういう関係にあるのかという点においても細
かく説明されている訳でもありません。
●ルカの福音書に記された系図(2:23-38)によりますと、マリヤがダビデの子孫(2:31)であるゆえに、彼女
がユダ族に属する者であるという事が分かります(2:33)。一方、エリサベツは祭司アロンの子孫(ルカ 1:5)で
あるゆえに、彼女がレビ族に属する者であるという事が分かります(民 26:59)。ですから、エリサベツは、マリ
ヤの母方の親類である事には間違いないと思います。
2)親類の不妊の女エリサベツの妊娠の衝撃的な知らせ(1:36b)
●36 節の中盤から後半に掛けて、御使いから衝撃的なニュースが知らされます!36 節の冒頭の「ご
覧なさい」という言葉は、その内容が衝撃的なニュースであるからです。その内容とは、「あなたの親類の
エリサベツも、あの年になって男の子を宿しています」というものでした!「あの年になって」というのは、
老齢を意味しています。マリヤはそのエリサベツの懐妊のニュースをここで初めて聞いたに違いありません。前
述しましたように、手紙を届ける郵便配達制度がある訳ではありませんし、電話もメールもありません。互い
の住まいもマリヤのガリラヤとエリサベツのユダですので、百数十キロも離れたところにいます。ですから、この衝
撃的なニュースは、マリヤにとっては初耳です。 ―6―
●また一方、親戚同士ですので、マリヤは、エリサベツが不妊で子どもが生まれなかったという事、そ
して既に出産適齢期も終えてしまったという事も知っていた事でしょう。ですから、この御使いによる
知らせはマリヤにとっては衝撃的なものでした!それゆえ、これまで「不妊の女といわれて」見下げら
れ、あざ笑われていたエリサベツが妊娠「六か月」というニュースを聞いて、マリヤは物凄く驚きまし
たしまた物凄く喜んだのでした!(ルカ 1:25/創 30:22-23/1 サム 1:6)
●エリサベツに起こった奇蹟は老齢期に受胎するというもので、マリヤが経験する処女降誕ではありません。
しかしそれにしても、エリサベツの妊娠「六か月」という事実は、神が奇蹟を行われ、人間的に不可能
な事を成し遂げられるお方だという事で、マリヤにとっては「しるし」となりました!神が「しるし」を
与えられたのは、マリヤが御使いの御告げを疑ったからではありません。そうではなく、その「しるし」
は、マリヤの信仰を落ち着かせ、また定着させるための船の「錨」のような「役を果たし」(ヘブ 6:19)
ました!前代未聞の人の想像を遥かに超える神の奇蹟を、マリヤが落ち着いた信仰で受け止める
事ができるようにという神の恵み深いお取り扱いを示しています!
【まとめ】 それでは、今回のメッセージのまとめをしましょう。
●この世に生を受ける全て人の内で、人であり罪のないお方はイエス・キリストのみでした!神が受
肉されるという事は、私たち人間の理解を遥かに超える神秘そのものでした!それを可能にしてく
れたのが、「いと高き神」で、天地創造をされた聖霊を通して、マリヤの胎の中に救い主の命を創造
されたのでした!それを受け入れるマリヤの信仰を励ますために、親類のエリサベツになされた不
可能を可能とする神の奇蹟の御業をしるしとして与えられました!マリヤが求めたのでしるしが備
えられたのではなく、それは神からマリヤに対してなされた恵み深い取り計らいでした!
【適 用】 それでは、今回のメッセージを私たち自身に対して適用しましょう。
●あなたがマリヤになったつもりで、御使いガブリエルの御告げを考えてみて下さい。神の御子イエ
ス・キリスト、救い主が受肉するために、あなたの胎に宿られるという事を告げられたと想像してみて
下さい。
●バプテスマのヨハネの誕生を預言されたザカリヤのように疑うのではなく、マリヤのようにその御告
げを受け入れ、それがどう実現するのかをへりくだって尋ねる事ができるでしょうか?そして、神が、あ
なたが最も必要としている励ましや信仰を備えて下さると信じる事ができるでしょうか?マリヤの信仰
に倣いまたそれを支えて下さる主に対して信頼を寄せる事ができますか?それぞれで、主の前に、自
分自身の信仰を吟味する時を持ちましょう。
【締めの御言葉】
聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます(ルカ1:35a)。
―7―