ルカの福音書講解説教(11)/メッセージ原稿/『マリヤへの神の受胎告知』(その 1)/2016.09.25
『全世界の救い主!』
―田舎娘マリヤ、無名の町ナザレ―
《ルカ 1:26-33/今回は 1:26a/他》

序 論】
●私はこれまで、いつか礼拝で、クリスマスの全体を捉えるメッセージを取り次ぐ事を願っていました。何と、
とうとうそのメッセージを取り次ぐスタートの日を本日迎えました。クリスマスシーズンが近づくと、私はよく教会
運営委員会で、いつかクリスマスをシリーズでメッセージする事を考えていますと伝えていました。なぜかと言
いますと、クリスマスに対する聖書的な理解が進む事によって、クリスマスへの備え方や取り組み方、
また会堂内のクリスマスの装飾等に至る全てに影響を与えるからです。通常、クリスマスメッセージと
言いますと、年末の 12 月だけに限られていたのではないかと思います。しかし、それではクリスマスの断片の
真理しか学べません。それゆえ、クリスマス全体をシリーズで学び、それによってクリスマス全体の流れや、そこ
に表された一つひとつの真理を理解し、神がこの世界になされた奇蹟そのものである救い主の誕生の
深い意義を捉える事ができたらと願うのです。
●今年も早9月の下旬を迎えていますが、本日の午後、早速第一回目のクリスマス実行委員会が持た
れます。クリスマス礼拝、祝会、燭火礼拝、そしてクリスマスイヴ燭火礼拝に備えるためです。本日から準備
を始めないと間に合わないからです。そして、その同じこの日、ルカの福音書からクリスマスのメッセージが始ま
ります。神の摂理を感じます。ルカの福音書の講解説教は今回で 20 回目のメッセージとなりますが(その内
9 回は、バプテスマのヨハネに関連した飲酒の問題を取り扱いました)、これから暫くの期間、クリスマスについ
ての連続講解メッセージが続きます。
●ところで、皆さん、クリスマス全体をシリーズで語ると何回くらいのメッセージになると思いますか?ま
たそれは、どの位の期間を要すると思いますか?ルカの福音書では、イエス・キリストの誕生に関して
は、全部で 75 節が割かれています。私が主に参考にしている英語の注解書が、この 75 節を解説する
のに123ページを要しています。それによってメッセージの回数を推測してみますと、約30回近くに及び
ます。という事は、約半年以上の期間を要します。長いですか、短いですか?秋もクリスマス、冬もクリス
マス、春もクリスマスという事になります。もしかすると、初夏もクリスマスになり兼ねません。それくらい、クリスマ
スを取り扱う量が実は多いという事を物語っています。それだけの期間を要する事によって、クリスマス
全体の真理が初めて明らかになります!私はワクワクしていますが、皆さんはいかがでしょうか?
◎序論/クリスマスとは
1)クリスマスの真実とは
●クリスマスは、全世界で、間違いなく最も世界的に祝われている祝日です。キリスト教が伝統となって
いる国々以外でも 12 月 25 日を休みとする国家は非常に多いです。例えば、インドのキリスト教人口
は 2%と言われますが、何とクリスマス当日は公休日です。シンガポールは中国系が殆どですし、バングラ
デシュやマレーシアも一般にイスラム教圏内にあると言っていいのですが 12 月 25 日は公休日になっていま
す。(続く) ―1―
日本はというと、クリスマスが公休日とはなっていませんが、外国の祝日に便乗してクリスマスは祝われていま
すしクリスマスイベントも盛んです。当教会の求道者の一人が、自分の母親について次のように語っていまし
た。「内の母親はクリスチャンではないんですが、クリスマスには何が何でもケーキを買いそしてご馳走を作って
祝うんです」。しかしまた同時に、全ての主要な祝日の中でも、恐らくクリスマスほど最も誤解されてい
る祝日はないと思われます!
●日本における公休日となっている祝祭日を取り上げてみましょう。1 月 1 日の元日から始まり、成人の
日、建国記念の日、春分の日、昭和の日、憲法記念日、みどりの日、こどもの日、海の日、山の日、
敬老の日、秋分の日、体育の日、文化の日、勤労感謝の日、そして 12 月23日の天皇誕生日に至るま
で、年間 16 日の祝日が法律によって定められており公休日です。これらの祝祭日は、日本の象徴である
天皇の誕生日を祝い、歴史的に重要な出来事を記念し、子どもの成長を喜び、老人を敬い、季節の変
わり目や自然の恩恵に対する感謝を表したり、身体の健康の促進をはかったり、文化や勤労に至るまで多
岐にわたっています。
●しかし、これらの祝祭日や記念日に比べ、クリスマスは誰をたたえまた何を記念としているのでしょ
うか?クリスマスは、神の御子であり救い主イエス・キリストをたたえ、そして神のなされた出来事を
記念して祝う祝日です!クリスマスは
......
、人が何かを達成した事を祝うのではなくて
...................
、神が成し遂げ
......
た事を祝います
.......
!日本を含め全世界の人々は、クリスマスをどのように祝っているでしょうか?サンク
ロース、クリスマスケーキ、クリスマスパーティー、クリスマスプレゼント、クリスマス装飾、クリスマスセー
ル・・・、これらはクリスマスの真の意味を反映してはいません!
●聖書が告げる本物のクリスマスの物語の中には
.....................
、人が作る要素は一切含まれていません
.................
!真の
クリスマスというのは、神の聖霊がイエス・キリスト誕生に劇的に関わり、この歴史における最も奇
蹟に溢れた、最も人の心を動かさずにはおかない物語です!クリスマスを本当の意味で祝う事ので
きる人々というのは、クリスマスについての次の重大な真理を信じ受け入れている方々です!それ
は、神がご自分の独り子をこの世に送られ
.................
、その独り子を信じる全ての人々の罪を赦すために身代
........................
わりとなって死ぬ事がクリスマスの重大な真理であるという事です
..............................
!クリスマスと
......


、独り子である
......
御子イエス
.....
・キリスト
....


、御子を信じる全ての人々の罪を赦すために十字架で死ぬために来られる
................................
事を意味します
.......
!死ぬために来られる
.........
、それがクリスマスの真理です
.............

2)クリスマスの預言とは
―創世記―
●マタイの福音書とルカの福音書にはキリストの降誕の記述がほぼ完全に記されているのですが(マ
タ 1:18-2:12/ルカ 1:26-2:20)、でもそれらの記述が、神である御子がこの世に来られる事を知
らせる最初の聖書の記述ではありません!一番初めのクリスマスに関する記述は、何と聖書の一番
初めの書巻である創世記 3 章から記され始めています!アダムとエバの不従順が人類を罪の中へ陥
れた後、創世記 3:15 に記された「女の子孫
....
」すなわち救い主イエス・キリストが、「悪魔のしわざを
打ちこわすため」(1 ヨハ 3:8)にこの世に誕生される事が預言されています!
―2―
●続いて、同じく創世記において、ヤコブが自分の息子であるユダに関して次のような預言をしています。
「王権はユダを離れず、統治者の杖はその足の間を離れることはない。ついにはシロ
..
が来て、国々の民は
彼に従う」(創49:10)。どういう意味なのでしょうか?ユダ族というのはイスラエルの南方に位置し、「ツロ」
は北方に位置しています。将来、南北を含めた全イスラエルを統治する王が来られる事を示唆しています。
そして、「国々の民は彼に従う」と預言しています。また一方、黙示 5:5 では「ユダ族から出た獅子、ダビ
デの根」と記されています。「獅子」はライオンです。強さの象徴です。「ダビデの根」とは、イスラエルの王
ダビデの子孫を表します。ユダ族のダビデの子孫でありそして強さを持っておられるお方が、地を支
配しているサタンからその権威を取り戻す事を示しています!その事を実行されるお方は、救い主
イエス・キリスト以外には存在しません!このように、救い主の誕生は、聖書の最初の書巻である創
世記から既に預言されていたという事に私たちは気づかなければなりません!
―申命記―
●出エジプト記において、モーセは、将来、救い主が来られるという預言をイスラエルの民に次のように伝え
ています。
18:14 あなたが占領しようとしているこれらの異邦の民は、卜者や占い師に聞き従ってきたのは確かであ
る。しかし、あなたには、あなたの神、主は、そうすることを許されない。 18:15 あなたの神、主は
..
、あな
..
たのうちから
......
、あなたの同胞の中から
..........
、私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる
.........................

彼に聞き従わなければならない。 18:16 これはあなたが、ホレブであの集まりの日に、あなたの神、主に
求めたそのことによるものである。あなたは、「私の神、主の声を二度と聞きたくありません。またこの大き
な火をもう見たくありません。私は死にたくありません」と言った。 18:17 それで主は私に言われた。「彼ら
の言ったことはもっともだ。 18:18 わたしは彼らの同胞のうちから
..............
、彼らのためにあなたのようなひ
..............
とりの預言者を起こそう
...........
。わたしは彼の口にわたしのことばを授けよう
....................
。彼は
..
、わたしが命じるこ
........
とをみな
....
、彼らに告げる
......
(申 18:14-18/使 3:22)。
●モーセは出エジプトしたイスラエルの民に対して、その第二世代が神が約束された地へ入って後に、同じ
イスラエル人の中から神が自分「のようなひとりの預言者を・・・起こされる」と預言しました。モーセ「のよう
なひとりの預言者」とはいったいどういう方なのでしょうか?その前に、モーセとはどのような預言者で
あったのかから探りましょう。一番目に、モーセは赤ん坊の時に死を免れました(出 2 章/マタ 2:13-23)。
二番目に、モーセは王宮を放棄しました(ヘブ 11:24-27/ピリ 2:5-8)。三番目に、モーセは同胞の民に
対してあわれみの心を持ちました(民 27:17/マタ 9:36)。四番目に、モーセは同胞のために執り成しを
しました(申9:18/ヘブ 7:25)。五番目に、モーセは神と顔と顔とを合わせて話しました(出34:29-30/2
コリ 3:7)。六番目に、モーセは契約の仲介者でした(申29:1/ヘブ 8:6-7)。これら六つの預言者モーセ
の特徴は、モーセの後に来られる救い主イエス・キリストの特徴とぴったり合致しています!イエス・
キリストは、まさにモーセ「のようなひとりの預言者」でした!救い主がこの世に誕生され、そのお方
はどのようなお方で、またどのような働きをされるのかという事は、既に申命記の中で預言されて
いました!
―3―
―詩篇―
●詩篇の 2 章に進みますと、ここでもまた明確に、神の御子である救い主がこの世界に来られそして世界を
支配する事が預言されています。
2:1 なぜ国々は騒ぎ立ち、国民はむなしくつぶやくのか。 2:2 地の王たちは立ち構え、治める者たちは
相ともに集まり、主と、主に油をそそがれた者
..........
とに逆らう。・・・2:6 「しかし、わたしは、わたしの王


立てた。わたしの聖なる山、シオンに。」 2:7 「わたしは主の定めについて語ろう。主はわたしに言われた。
『あなたは、わたしの子
.....
。きょう、わたしがあなたを生んだ。 2:8 わたしに求めよ。わたしは国々
をあなたへのゆずりとして与え、地をその果て果てまで、あなたの所有として与える。 2:9 あな
たは鉄の杖で彼らを打ち砕き
...........
、焼き物の器のように粉々にする。』・・・2:12 御子
..
に口づけせよ。
主が怒り、おまえたちが道で滅びないために。怒りは、いまにも燃えようとしている。幸いなことよ。すべて
主に身を避ける人は。」(詩 2:1-2、6-9)。
地の王たちが「主と、主に油をそそがれた者」とに逆らう事が預言されています。これは文字通り、ヘロデと
いう異邦人の王やピラトという異邦人支配者たちをはじめイスラエルの宗教指導者たちや民衆が、
救い主イエス・キリストに逆らう事を示しています(使 4:25-26)。そして、このお方は救いを達成されて
天に帰られ、後には再臨されてこの地を治められる事が預言されています。イエス・キリストが「鉄の杖」でこ
の地を治められる千年王国には、悪がはびこる事がないと預言しています!それゆえ、「御子に口づけせ
よ」、救い主であるイエス・キリストに忠誠を尽くしまた従いなさいと命じられています!
―イザヤ書―
●イザヤ書に進みましょう。預言者イザヤは、「それゆえ、主みずから、あなたがたに一つのしるしを与えられ
る。見よ。処女がみごもっている
..........
。そして男の子を産み
......
、その名を
....
『インマヌエル
......
』と名づける
.....
。」(イザ
7:14)と、救い主イエス・キリストの処女降誕を明確に預言しています!今回から始まったクリスマスメッ
セージの第一のテーマは『マリヤへの神の受胎告知』です。そして、後の第二のテーマは『処女降誕、神
の奇蹟』です。その人の想像を越える処女降誕の神の奇蹟が、救い主の誕生の 700 年前には既に
預言されていました!更に、預言者イザヤは、9 章で次のように預言しています。
9:6 ひとりのみどりごが
.........
、私たちのために生まれる
...........
。ひとりの男の子が
........
、私たちに与えられる
.........
。主
権はその肩にあり、その名は「不思議な助言者
.......
、力ある神
....
、永遠の父
....
、平和の君
....
」と呼ばれる。
9:7 その主権は増し加わり
..........
、その平和は限りなく
.........
、ダビデの王座に着いて
..........
、その王国を治め
.......
、さ

ばきと正義によってこれを堅く立て
................
、これをささえる
.......
。今より
...
、とこしえまで
......
。万軍の主の熱心が
これを成し遂げる(イザ 9:6-7)。
●イザヤは、救い主は突然世に表れるのではなく、まずは「みどりご」すなわち赤ん坊としてお生まれ
になり、それは「男の子」で、後に公生涯を始められて救いを達成され、そしてその後に再臨されて
この世界を正しく治められる事を預言しています!更にまた、イザヤは、救い主がご自分の選びの
民の罪のための身代わりとして犠牲的な死を遂げられる事に関して、52:13-53:12 において詳
細に預言しています!
―4―
―その他の旧約聖書の預言―
●ダニエル書においては、「ダニエルの 70 週の預言」に見られますように、救い主が来られる時、その後
の教会時代、そして再臨と千年王国について預言しています(ダニ 9:25-26)。ミカは、救い主の誕生
の場所をその通りズバリ預言しています(ミカ 5:2)。また、旧約聖書は、救い主の生涯やその働きに関
する実に多くの預言が記されています(詩 40:7-8、110:1、4、118:22、26/イザ 8:14、11:2、10:、28:
16、61:1-2/エレ 23:5/ゼカ 9:9、12:10、13:7)。
―救い主に関する預言の重要性と適用を怠った弟子たちをたしなめるイエス様―
●旧約聖書にはこんなにも救い主イエス様に関する記述が豊富に記されているにもかかわらず、
イエス様の復活後のエマオの途上で、弟子たちがそれらの預言の重要性をイエス様ご自身へ適用
する事において失敗している事について、イエス様は彼らをたしなめました。その時、イエス様は次の
ように語っておられます。
24:25 するとイエスは言われた。「ああ、愚かな人たち。預言者たちの言ったすべてを信じない、心の
鈍い人たち。 24:26 キリストは、必ず、そのような苦しみを受けて、それから、彼の栄光に入るは
ずではなかったのですか。」 24:27 それから、イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、
聖書全体の中で、ご自分について書いてある事がらを彼らに説き明かされた(ルカ 24:25-27/参
24:44-47)。
―導 入―
●救い主が誕生されるという約束は、真実な信仰を持って忠実に待ち望んでいるイスラエルの残り
の民、選びの民にとっては文字通り何世紀にもわたる望みでした!そして、その預言されていた神の
約束は、引き続き、御使いガブリエルがナザレの田舎の若い娘マリヤに対する現れによって成就へ
向かって行きました!ルカは、神によって顕されるキリストの誕生の特質を、飾り気のないシンプルな
記述で伝えています。
●今回は、75 節中、最初の 8 節を 3回のメッセージで紐解きます。そのテーマは、『マリヤへの神の受胎
告知』で、今回の主題が『全世界の救い主!』です。そして、副題が「田舎娘マリヤ、無名の町ナザレ」で
す。全体並びに今回のアウトラインは次の通りです。
【全体のアウトライン】
[1]神に遣わされし御使いガブリエル(1:26a)/今回
[2]神に選ばれしマリヤ(1:26b-27)/次回
[3]神に恵まれしマリヤ(1:28-30)/次回
[4]神に送られし御子イエス・キリスト(1:31-33)/次々回
【今回のアウトライン】
[1]神に遣わされし御使いガブリエル(1:26a)
1)御使いガブリエル
2)田舎娘マリヤ、無名の町ナザレ
―5―
【本 論】
[1]神に遣わされし御使いガブリエル(1:26a)
1)御使いガブリエル
●それでは、ここから本論です。26 節の前半の御言葉を紐解いて行きましょう。今回のメッセージは、26 節
の前半のみを取り扱います。「ところで、その六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤ
のナザレという町・・・に来た」と記されています。「ガブリエル」と言えば、既に学びましたように、敬虔な祭
司であったザカリヤに表れた「御使い」でした。その時に、ザカリヤとエリサベツという老年の夫婦に、救い主へ
人々の心を備えさせる働きを担うバプテスマのヨハネが誕生するという神からのメッセージが伝えられました。
この「御使いガブリエル」の現れは、何と、旧約と新約の間の四百年間の沈黙を破る神の介入でした。
●ルカはここで「その六か月目に」と記していますが、それは、ザカリヤの妻エリサベツがバプテスマのヨハネを
宿してから「その六か月目に(なる)」という事を指しています。その時に、「御使いガブリエル」が再び神か
ら遣わされて、かつてこの世が聞いた事のない、全く知らない、前代未聞である最も重要な誕生に
ついての宣告がされるのです!それは、この人類の歴史における最も重要な出来事となります!そ
の出来事とは、唯一の救い主である主イエス・キリストの誕生です!
2)田舎娘マリヤ、無名の町ナザレ
●ガブリエルというと、ミカエルと共に、イスラエルの歴史の重要な局面において神によって用いられて来た御
使いです。全能の神の側近中の側近として仕えている御使いです。そのガブリエルが神からの重要なメ
ッセージを、誰もが重要と考えているイスラエルの首都エルサレムではなく、「ガリラヤのナザレとい
う町」に届けました。「ナザレ」と言えば物凄い小さな町で、ニ、三百の人口と言ったところです。ルカは、
パレスチナの地理を知らない異邦人の読者に配慮して、「ナザレ」が「ガリラヤ」にある町だという事を伝え
ています。首都エルサレムから北へ、120Km~160Km離れたところに位置しています。
●この小さな「ナザレ」という町はへんぴなところにあり、旧約聖書の中にも、タルムードというユダヤの口伝
や解説をまとめたもので聖書に次ぐ聖典とされるものの中にも、また歴史家ヨセフスの書籍の中にもその町
の名前が一切出て来ません。町というより、村落や集落と見なした方がいいのではないかと思われます。そう
いう訳ですから、勿論、商人達が行き交う主要な幹線沿いにある訳ではありません。すべての重要な道
路は「ナザレ」を迂回する形で造られています。「ナザレ」は人里離れた町で、重要なユダヤ人の文化や
宗教の中心からは大きくそれていました。
●更に、「ナザレ」のある「ガリラヤ」は、「異邦人のガリラヤ」(イザ 9:1/マタ 4:15)と呼ばれていた地方でした。
なぜなら、「ガリラヤ」がシリヤという異邦人の領域に接していたからです。神は御使いガブリエルを通して、
ユダヤ人が軽蔑する異邦人の地に隣接した無名の町「ナザレ」に住んでいる田舎娘マリヤに対して、
救い主の受胎告知をされたのです!これはいったい何を意味しているのでしょうか?二つの意味が
あります。一つ目は、神は力があり洗練されたエリートが住む都市の人々だけでなく、無名の町「ナザ
レ」の田舎娘を選ばれそして用いられるという事を示しています!(続く)
―6―
二つ目は、救い主は、ユダヤ人だけでなく異邦人を含めた全世界の救い主であるという事を示して
います!ところで、日本人はどの部類に属する民族ですか?ユダヤ人ですか異邦人ですか?異邦
人ですね。神は異邦人である日本人を、救いの恵みの中に招いておられるのです!感謝です!聖書は、
次のように語っています。「ユダヤ人であってもギリシヤ人であっても、召された者にとっては、キリスト
は神の力、神の知恵なのです」(1 コリ 1:24)、と!
―「ナザレのイエス」―
●最後に、もう一つだけ、「ナザレ」について言及させて下さい。「ナザレ」はイエス様自身の誕生の地ではな
く、イエス様が幼少期、少年期、そして青年期を過ごされた町でした。イエス様の誕生の地はベツレヘムでし
た。しかし、後に両親は幼少のイエス様を連れて「ナザレ」に戻り、公生涯を始めるまでこの無名の田舎町
「ナザレ」で過ごされました。それゆえ、イエス様は「ナザレのイエス」(マタ 10:47/ルカ 18:37/使 3:16、18:38、
22:8)と呼ばれるようになりました。「ナザレから何の良いものが出るだろう」(ヨハ 1:46)とピリポが語りましたよ
うに、「ナザレ」は全てのユダヤ人たちからはさげすまれていた町でした。「異邦人のガリラヤ」しかもその
中でガリラヤの人々からもさげすまれていた「ナザレ」でイエスが育ったという事自体、神殿のある首
都エルサレムに拠点を置く宗教指導者たちや人々からは到底受け入れられないものでした。しかし、
これは、イエス様が「苦難のしもべ」(イザヤ 9:1-2)として来られ、しまいには十字架の苦難を味わ
うという事を示す意味があって付けられた呼び名でした!
【まとめ】
●クリスマスほど全世界で祝われ、またクリスマスほど誤解されて祝われている祝日はないという現
実があります。聖書が告げる本物のクリスマスの物語の中には、人が作る要素は一切含まれていま
せん!クリスマスを本当の意味で祝う事のできる人は、神がご自分の独り子をこの世に送られ、そ
の独り子を信じる全ての人々の罪を赦すために身代わりとなって死ぬ事であったという重大な真理
を理解して、救い主を信じ受け入れる者です!
●救い主の誕生というクリスマスの記述は、旧約聖書の一番初めの創世記から既に預言され、聖
書のありとあらゆるところに十分に記されています!そして、四百年の沈黙の後、とうとう救い主誕生
の預言が、御使いガブリエルによるマリヤへの現れによって成就し始めました。聖書の預言ほど確かなもの
はなく、聖書の預言の成就ほど確かなものはありません!
●また、神は力ある洗練された都市部の人々だけでなく、無名の町「ナザレ」の田舎娘も選ばれそし
て用いられる事を示していました!そして、救い主は、ユダヤ人だけでなく異邦人を含めた全世界
の救い主である事を示していました!神は、人を人種や身分や地位で判断なさるお方でない事を
示していました!
―7―
【適 用】
●あなたはクリスマスの真理を理解しておられますか?あなたのクリスマス理解に歪みはありはませ
んか?また、クリスマスの真理を知らずにクリスマスを祝っているあなたの身近な方々に対して、あな
たは愛と祈り心を持ってその方々に接し、真理を伝えようとしていますか?また、聖書の預言がいか
に正確に実現し、聖書そのものがいかに誤りのない書物であるという事を伝える準備は出来ていま
すか?そして最後に、神は人を人種や身分や地位で判断なさるお方ではなく、イエス・キリストが全世
界の救い主である事を誇りに思って宣べ伝える事ができますか?
【締めの御言葉】
イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全体の中で、ご自分について書いてあ
る事がらを彼らに説き明かされた(ルカ24:27)。
―8―