『アンティオキア教会、力あるキリスト教会の特徴』(その2/最終編)
『主の教えに驚嘆して信仰に入った地方総督!』―霊的使命に従う教会、霊的妨害に直面する教会、霊的勝利を得る教会―《使徒13:1-52/今回は13:2c-13》
【序 論】
●『アンティオキア教会、力ある教会の特徴』というテーマのメッセージは、今回がその二回目で、締めくくりとなります。前回は、13:1の霊的指導者たちがいる教会と、続く2節の一行目の「礼拝」と「断食」という言葉から、霊的働きをする教会という点を取り上げて学びました。そして今回は、三番目の霊的な使命に従う教会、四番目の霊的な妨害に直面する教会、そして五番目の霊的勝利を得る教会について御言葉を学んで行きます。この順番でメッセージを取り次ぎますが、取り上げる聖書箇が前後しますので、それによって戸惑わないようにしてください。そして特に、聖霊に満たされたパウロと悪に満たされたバルイエスとの対峙や、その後の地方総督セルギウス・パウルスの回心の場面は圧巻の内容です!
●今回のメッセージの主題は『主の教えに驚嘆して信仰に入った地方総督!』で、副題は「霊的使命に従う教会、霊的妨害に直面する教会、霊的勝利を得る教会」です。それでは、今回のアウトラインを通して、メッセージの流れを把握する事にしましょう。
【全体のアウトライン】
[1]力あるキリスト教会の特徴(13:1-13)/前回&今回
[2]キリストの福音を宣べ伝える(13:14-41)/次回
[3]明暗を分けるキリストの福音(13:42-52)
【今回のアウトライン】
[1]力あるキリスト教会の特徴(12:1-13)/前回&今回
1)霊的指導者たちがいる教会(13:1)/済
2)霊的働きをする教会(13:2a、b)/済
3)霊的使命に従う教会(13:2c-5)
ア)聖霊は実績のある働き人を重要な働きに選ばれる(13:2c)
イ)聖霊は主権を持って働き人を任務につかせる(13:2d)
ウ)聖霊が働き人を遣わされる時まで教会は待ちそして送り出す(13:3、4a)
エ)聖霊が遣わされた最初の異邦人宣教地(13:4b-5)
4)霊的妨害に直面する教会(13:6-8、13)
ア)外からの妨害(13:6-8)
イ)内からの妨害(13:13)
5)霊的勝利を得る教会(13:9-12)
ア)聖霊に満たされたパウロと悪に満たされたバルイエス(13:9-11)
イ)主の教えに驚嘆した地方総督の救い(13:12) ―1―
【本 論】
[1]力あるキリスト教会の特徴(13:1-13)
●敬虔な霊的指導者たちがいて、そしてその自らの働きを神への礼拝として献げ、神に導かれる断食と祈りをもって職務を全うして行くのなら、神は次に、その霊的指導者たちを更なる霊的働きへと拡大させて行かれます!アンティオキア教会にとって、その更なる働きとは何であったでしょうか?それが、異邦人世界への福音宣教を推進する事でした!
3)霊的使命に従う教会(13:2c-5)
ア)聖霊は実績のある働き人を重要な働きに選ばれる(13:2c)
●そのために、神は誰をその使命のために選び、用いようとされたのでしょうか?それが、三番目の霊的使命に従う教会に必要な第一原則となります。2節後半に、「聖霊が、『さあ、わたしのためにバルナバとサウロを聖別して、わたしが召した働きに就かせなさい』と言われた」、と記されています!聖霊なる神が、異邦人世界の宣教という重要な働きに選ばれた器は、「バルナバとサウロ」でした!この二人は、神の重要な働きに選ばれるにふさわしい器たちでした!どういう意味でふさわしかったのでしょうか?それは、二人が、十分な経験と実績とによって、既に、神に用いられる器として証明されていたからです!その上更に、彼らは、アンティオキア教会の中心人物たちであり、またベストな人材たちでした!
●二人は、どういう意味で、十分な経験と実績をもっていたのでしょうか?まずは、サウロから始めましょう。サウロがダマスコ途上で回心して後、彼はダマスコから「アラビヤに出て行き」(ガラ1:17)、そこで「三年」(ガラ1:18)の時を過ごします。彼はそこにいて、只一人黙想の日々を過ごしていたのではありません!そうではなくて、当然、福音宣教をし、教会を建て上げていたに違いありません!その後、バルナバの助けによってエルサレムに戻って初代教会に加わりましたが、迫害によって急遽、郷里であるキリキヤのタルソへ追いやられました(使徒9:30)。郷里タルソで何をしていたのでしょうか?やる事は決まって一つです!郷里伝道です!彼の使命は、福音宣教でした!「福音を宣べ伝えないなら、私はわざわいだ」と、彼自身が語っている通りです!(1コリ9:16)ですから、サウロは、バルナバによってアンティオキア教会へ招かれるまで、ずっと主の働きをしており、その実績は十分に証明されていました!多くの偽預言者や魔術師と対峙していましたので、この後出て来る「キプロス」島での、「魔術師」であり「偽預言者」である「バルイエス」の取り扱いにおいても、十分に力を発揮する事ができました!
●一方、バルナバはどうだったでしょうか?使徒4章から登場しているバルナバにしても、使徒たちからお墨付きをいただくほど、彼の実績は十分に証明されていました!前回触れましたように、彼の名前は、元々「ヨセフ」でしたが、「使徒たちによって」あえて「慰めの子」を意味する「バルナバと呼ばれてい(まし)た」(4:36)。それほど、彼は愛に富み、慰めと励ましに溢れ、優しさに満ちていた人でした!また、「彼は立派な人物で、聖霊と信仰に満ちている人で」した!(使徒11:24)使徒たち以外でしるし・不思議・奇跡という力ある業を継続して行っていたのは、ステパノや(使徒6:8)、ピリポ(使徒8:6)、そしてこのバルナバ(使徒15:12)くらいでした。
―2―
●聖霊なる神が異邦人世界への宣教という重要な働きに選ばれた器とは、このように十分に経験があり、その実績が証明された器たちでした!牧師の選出においても全く同じ原則が適用されねばなりません!どういう同じ原則であったでしょうか?それは、「信者になったばかりの人であってはいけません」という原則でした!(1テモ3:6)なぜなら、練られて十分な経験と実績とがなければ、「高慢になって、悪魔と同じさばきを受けることに」なるからです!(1テモ3:6)
●前回のメッセージで触れましたが、「民も祭司も同じようになる」という御言葉から、祭司が堕落すれば民も堕落するのです!(ホセ4:9)逆に、祭司の霊性が高められれば民の霊性も高められるのです!この御言葉を更に別の表現でするのでしたら、民は、霊的指導者の霊性以上にはならないという事を示しています!ですから聖書は、「多くの人が教師になってはいけません」と警告しているのです!(ヤコ3:1)霊的指導者の責任は、神の前で、非常に大きいのです!
イ)聖霊は主権を持って働き人を任務につかせる(13:2d)
●霊的使命に従う教会に必要な第二の原則に進みましょう。同じく2節の後半には、「聖霊が・・・『わたしが召した働きに就かせなさい』と言われた」と告げています。ですので、第二の原則とは、聖霊が主権を持って働き人を任務につかせるという事です!教会が、サウロとバルナバを選んだのではないのです!また、サウロとバルナバが立候補して選ばれたのでもないのです!そうではなくて、聖霊なる神が彼らを召されて、異邦人宣教の働きに「就かせ(た)」のです!
ウ)聖霊が働き人を遣わされる時まで教会は待ちそして送り出す(13:3、4a)
●それから、霊的使命に従う教会に必要な第三の原則が、神が遣わされる時まで教会は待ち、それから送り出すという事です!アンティオキア教会は、異邦人世界の宣教のために策略を巡らしたり、綿密に戦略を立てていたのではなかったのです!そうではなくて、彼らは、神が既に彼らに委ねておられる働きを成し遂げる事に集中していたのです!「エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、さらに地の果てまで」すなわち異邦人の世界に至るまで、「わたしの証人となります」というのは神からのヴィジョンであり(使1:8)、彼らに既に委ねられていた働きでした。ですので、神の将来のご計画を見分ける上での重要なポイントは、現時点で、神の御心を行うという事です!(Right!)聖霊がここで、具体的に、どのようにアンティオキア教会へ語られたのかについては記されていませんが、預言者を通して、恐らくそのような内容に関するメッセージが伝えられたのであろうと考えられます。
●聖霊が異邦人宣教のために命じたのは、アンティオキア教会の最も中心的な二人の指導者であったのですが、ここで注目したい事は、アンティオキア教会が、その聖霊の命令に直ちに従った事です!聖霊の命令に対する教会のこの応答を凄いと思いませんか?誰一人、不平を言う者も、腹を立てる者もいませんでした!普通でしたら、「ええ、どういう事ですか?なぜ、バルナバとサウロなのですか?この中心的な指導者がいなくなったら、アンティオキア教会はどうなるのですか?せめて一人は残して下さい」、などと言いたくなります。しかし、彼らの反応はと言いますと、喜んでサウロとバルナバとを異邦人宣教へ献げる事でした!(I see!)
―3―
●彼らは、サウロとバルナバの働きが必ず成功して実りをもたら事を確信した事でしょう!「そこで彼らは断食して祈り、二人の上に手を置いてから送り出し」ました!(14:3)「ふたりの上に手を置いてから」というのは、聖霊を受けるとか、また働きに任命するというような意味ではありません。彼らは既に聖霊を受け、聖霊によって既に任命された者たちだからです。「ふたりの上に手を置(く)」とは、サウロとバルナバがこれから行う異邦人宣教に関して、私たちはその働きを公けの場で同意し、一致を持って霊的にも経済的にも支えて「送り出(す)」という事を意味していました!(I see!)4節の前半の御言葉には、「二人は聖霊によって送り出され」と記されています!この異邦人宣教が、神の聖霊の働きである事を再確認させています!教会はこの聖霊の働きを認め、「二人」をその尊い働きへ解放したのです!
エ)聖霊が遣わされた最初の異邦人宣教地(13:4b-5)
●4節の後半によりますと、聖霊が遣わされた最初の異邦人宣教の地名が記されています。「キプロス」です。「キプロス」については前回も取り上げましたが、シリヤの海岸から約百Km離れた地中海に浮かぶ島です。サウロとバルナバがこの「キプロス」を選んだのには、いくつかの明確な理由がありました。それは、「キプロス」がバルナバの出身地であったからです(使4:36)。ですから、その島の宗教や文化また地理や地形についてもよく把握されていました。更に、「キプロス」は多くのユダヤ人が住んでいました。そういう理由から、異邦人世界の第一番目の宣教地として、「キプロス」が最もふさわしい出発点でした。(I see!)それが、聖霊が最初に選ばれた異邦人の宣教地でした!
●5節に進みますと、二人が港町である「サラミスに着くとユダヤ人の諸会堂で神のことばを宣べ伝え」始めました。パウロの異邦人世界における宣教旅行で一貫したアプローチは、まずはユダヤ人に福音を宣べ伝える事でした。「キプロス」の「サラミス」には、いくつものユダヤ人会堂がありました。会堂から会堂へと移動しながら旅をしていた際に、サウロとバルナバは、「ヨハネも助手として連れて」いました。この「ヨハネ」は、「マルコと呼ばれているヨハネ」(12:12)で、使徒ペテロの覆いの下で、マルコの福音書を記した人物です。彼はエルサレムで生まれ育ち、またバルナバのいとこでもありました(コロ4:10)。彼については13節に再度記されていますので、そこで取り上げる事にしましょう。
4)霊的妨害に直面する教会(13:6-8、13)
●それでは、四番目の霊的妨害に直面する教会について取り上げましょう。霊的指導者が霊的な働きを全うするのでしたら、神は更なる霊的な働きへと拡大させてくださいます!それは、アンティオキアの指導者であるサウロとバルナバが、異邦人宣教という更なる働きへと聖霊によって導かれて行く事によって理解する事ができます!しかし、神の民が神の目的を更に遂行しようとする時に、必ず直面するのがサタンの妨害です!
―4―
ア)外からの妨害(13:6-8)
ⅰ)ローマ政庁所在地パポスの特徴(13:6a)
●6節に記されていますように、サウロとバルナバは、文字通り「島全体を巡回して」宣教し、この島の最後の宣教教地である「パポス」へ到着しました。この「パポス」は、最初に着いた港町「サラミス」からは一番離れた所にあります。「パポス」がローマの行政の中心地である事に加えて、この町は、アフロディトという女神を礼拝する中心地でもありました。ギリシヤ神話に出てくる愛と美の神の名前です。ローマ神話のヴィーナスと同じ女神と考えて差し支えありません。ギリシャ神話で愛と美の神と言えば、皆、性的不道徳を示すものばかりです!このアフロディトは、キプロス島の近くの海で誕生したと伝えられています。それで、キプロス島のパポスには、この女神を祭る神殿が建てられて礼拝されていました。この祭りは春毎に3日間行われ、キプロス島の人々だけでなく、その島を取り囲む多くの国々から群衆が押し寄せて来ました。この祭りに乗じて、広範囲にわたって神殿売春が行われました。そういう意味で、この「パポス」は、不道徳が充満している町でした!
●しかし、幸いな事に、そのような不道徳な町にキリストの福音が伝えられ、救いの御業が拝されて行くのです!キプロスの首都パポスでの福音宣教に対して妨害が待ち受けているのですが、そんな中にあって、聖霊による救いの御業は力強く前進して行きます!
ⅱ)ユダヤ人魔術師、偽預言者、地方総督、そして神の器たちとの対峙(13:6b-8)
―「バルイエス」というユダヤ人の「魔術師」、「偽預言者」―
●6節の後半で、サウロとバルナバは「魔術師に出会(い)」ました。「魔術師」という言葉が、必ずしも邪悪なものとして使われているのではありません。その例として、マタイ2:1で、誕生した救い主に出会おうとして「東方の博士たち」がエルサレムにやって来ましたが、この「博士」という言葉と「魔術師」という言葉は、“マゴス”という同じ言葉が使われています。この言葉は、アッシリヤを破ったメディアの国に代々続いていた祭司の種族に対して使われて来た言葉でした。彼らは、天文学や占星学、また農業、数学、そして歴史に精通していました。また、彼らは超自然的な、神秘的な事柄にも関わっており、夢を解く能力においては有名であったと言われています(ダニ2:1)。彼らは政治的にも強い影響力を持っており、彼らの承認なしには、ペルシャの支配者は権力を握る事はできませんでした。
●しかし後の時代になると、「魔術師」という言葉が、様々な魔術を行う者たちや魔法をかじっている程度の人々にも使われるようになりました。この「バルイエスという名のユダヤ人」の「魔術師」は、明らかにメド・ペルシャ時代の「博士」という人々とは異なる者でした。「バルイエス」は、10節に記されていますように、「あらゆる偽りとあらゆる悪事に満ちた者」で、自分の持っている知識や知恵を悪しき事に使っていた人物でした。「バルイエス」は、「魔術師」だけではありませんでした。ルカは、彼を「偽預言者」だと記されています。そこで、彼の名前の意味そのものに目を留めてみましょう。「バル」は息子という意味で、「イエス」はイエス・キリストの「イエス」と同じで、「主は救い」という意味です。ですから、「バルイエス」は、「救いの子」という意味になります。自分は「預言者」であると主張して人々を欺き、その実態は「あらゆる偽りとあらゆる悪事に満ちた者」であり、事実上の「偽預言者」でした!(I see!)彼は「救いの子」なのではなく、サウロが10節で言っているように、実は「悪魔の子」でした! ―5―
●7節で、ルカは、この「バルイエス」が「地方総督セルギウス・パウルスのもとにいた」と伝えています。彼が地方総督と関わっているのは、何も偶然な事ではありません。なぜなら、彼は「悪魔の子」として、闇の国の策略によって、この世の支配者に対する影響力を行使していたのです!それは、「この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊」の仕業です!(エペ6:12/ダニ10:13-11:1)
―地方総督セルギオ・パウルス―
●ローマから遣わされた総督の名は「セルギウス・パウルス」で、ルカは7節で、彼について「賢明な人」と記しています。ルカの記述がいかに正確なものであるのかが、キプロス島の北の沿岸に位置するソロイという地から発掘された碑文によって証明されています!(Wow!)その碑文が、「セルギウス・パウルスの属州総督の地位」にあった年代を記しており、聖書の記述と合致しています!※1「賢明な人」である総督は、元々ユダヤ教に関心がありました!バルイエスというユダヤ人の教師を、彼が背教者であっても、側近の一人として置いた事からも分かります!(I see!)それに加え、キプロス島の至る所で、ユダヤ人であるサウロとバルナバが語る新しい信仰が宣べ伝えられていましたので、ユダヤ教をもっと知る上でもとても役に立つだろうと考え、二人を「招いて、神のことばを聞きたいと思っていた」のです!(13:7b)(I see! & Wonderful!)
●となると、総督の側近の中の一人であるユダヤ人魔術師「バルイエス」の心中は、穏やかなものではりませんでした!彼は、総督のキリスト教への回心を予測していましたので、そうなった時に、自分の地位が危うくなる事に不安を感じて手を打ったのです!(I see!)どんな手を打ったでしょうか?8節にありますように、「その魔術師エルマは、ふたりに反対して総督を信仰から遠ざけようと」試みました!彼は、彼の邪悪な主人であるサタンの命令を実行に移したのです!(I see!)「バルイエス」はギリシャ語名を持っていましたが、それが「エルマ」という名前で、そのギリシャ名で、彼は総督官邸では知られていました。(I see!)この6節の後半から8節に掛けて、私たちはどのような教訓を学ぶべきなのでしょうか?ある人をキリストへ導くという事は、地獄の軍勢との全面戦争を意味しています!サウロとバルナバは、「セルギウス・パウルス」の魂の救いのために、「バルイエス」と霊的な戦いを戦おうとしていたのです!未信者は自分では気づいていませんが、全てサタンの支配下にあります!それゆえ、その魂がキリストを信じるという事は、サタンの支配から神の支配に移される事になります!そえゆえ、そこに、霊的な全面戦争が繰り広げられるのです!
イ)内からの妨害(13:13)
○マルコの離脱とその結果(3:13、15:36-40)
●しかし、このような外からの攻撃だけがサタンの唯一の策略ではありません。それよりも、幾世紀にもわたってもっと致命傷を負わせて来たサタンの策略というものがあります。それは何でしょうか?教会の内からくる攻撃です!この最初の異邦人世界への宣教旅行で、どのような内なる攻撃があったのでしょうか?それが、サウロとバルナバの「助手」として連れて行った「マルコと呼ばれているヨハネ」に対する圧力から始まりました!(I see!)その時は、そんなに驚くような事には見えなかったのですが、後々に、異邦人宣教の働きに分裂をもたらすような問題にまで発展して行きます!(I see!)それが、サタンの内なる妨害です! ―6―
●そのきっかけとなる出来事が、13節に記されています。「パウロの一行は、パポスから船出してパンフィリヤのペルゲに渡ったが、ヨハネは一行から離れて、エルサレムに帰ってしまった」という出来事です。「パンフィリヤ」という地方は、キプロス島から地中海を渡って斜め北にある陸地にあり、現在のトルコの南沿岸に相当するところです。そこに「ペルゲ」という町があり、小アジアのローマ領における主要な町でした。
●「ヨハネは一行から離れて、エルサレムに帰った」という理由は何であったのでしょうか?その理由は聖書には記されていません。ある人は、マルコが、強盗の一団が横行するパンフリヤの山々を旅するのが怖かったのではないかとコメントしています(2コリ11:26)。また、ある人は、マルコは、サウロが彼のいとこであるバルナバよりも主導権を持っていた事に腹を立てていたのではないかと語っています。またある人は、マルコは、パウロが異邦人へ福音を宣べ伝える事を強調している事に不満を示していたのであろう、とも言っています。そしてある人は、マルコは、迫害を恐れていたのであったであろうとも言っています。
●理由がどのようなものであれ、パウロは、マルコの行動を容認する事はできないと考えていました(使徒15:38)。マルコが「一行から離れて、エルサレムに帰ってしまった」のですが、それによって異邦人宣教旅行が途絶えたのではありません。しかし悲しい事に、パウロとバルナバという最強の宣教チームに分裂が生じたのです!(使徒15:36-40)。内側の意見の相違、不和、不一致が、外からの反対の嵐に対してしっかりと立っていた神の働きを崩壊させようとするのです!内側からの妨害が厄介なものである事を物語っています!
5)霊的勝利を得る教会(13:9-12)
ア)聖霊に満たされたパウロと悪に満たされたバルイエス(13:9-11)
●最後のポイントに進みましょう。『力ある教会の特徴』の五番目のポイントは、霊的勝利を得る教会です!9節に戻りますが、「セルギウス・パウルス」の魂の救いのための戦いが、そのピークに達しようとしていました!魔術師に妨害されていた「サウロ」が、ローマ名では「パウロ」が、「聖霊に満たされ(て)」、「バルイエス」を「にらみつけ」ました!そして、10節で、「ああ、あらゆる偽りとあらゆる悪事に満ちた者、悪魔の子、すべての正義の敵」と断言して、パウロは、「バルイエス」の正体を顕わにしました!彼は「救いの子」ではなく、「悪魔の子」でした!彼は自分を「正義の」預言者だと考えていましたが、本当は「すべての正義の敵」でした!それで、パウロは、絶えず神の真理を曲げそして悪用する「バルイエス」に向かって、「おまえは、主のまっすぐな道を曲げることをやめないのか」と言って、彼を攻めしました!
●しかし、「バルイエス」はこの厳しい叱責の言葉で逃げ去りませんでした。それで次に、パウロが彼に対して、「見よ。主の御手が今、おまえの上にある。おまえは盲目になって、しばらくの間、日の光を見ることができなくなる」と告げました!「するとたちまち」、「バルイエス」に対して、「かすみと闇が彼をおおったため、彼は手を引いてくれる人を捜し回(り)」ました!(Wow!)神の御手が動いたのです!彼のやっている事が神の御旨に反抗するものであるという事が、はっきりと示されたのです!
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●よく考えてみますと、「バルイエス」は、これまで多くの人々を霊的に盲目にして来ました!しかし今度は、彼の肉眼が見えなくされて、彼自身が苦しむようになりました!しかしいかがでしょうか、彼に対するこの神の懲らしめの中に、神のあわれみが見る事ができないでしょうか?彼は、どの位の間、「日の光を見ることができなく」されると告げられたでしょうか?永久にでしょうか?その答えは、「しばらくの間」です!神のあわれみ以外の何ものでもありません!(Wow!)
●それと同時に、この使徒の働きの中で、「かすみとやみが・・・おおった」という体験をした人が、他にいませんでしたでしょうか?その人とは、「バルイエス」に対して、「おまえは盲目になって、しばらくの間、日の光を見ることができなくなる」と宣言した人物、パウロです!パウロも神のあわれみによって盲目の中から回復を導かれ、自分が迫害していたイエス・キリストが真の救い主であるという事を神によって悟らされた事によって、助けていただいた人物でした!恐らく、パウロ自身も、この神への敵対者「バルイエス」が、悔い改めに導かれるように願って祈ったと考えられます!もしかしたら、「パウロ」と「地方総督セルギウス・パウルス」と「バルイエス」の三名が、天国で再会したのかも知れません!その事を望みたいです!私たちの信じている神は、そのような哀れみ深いお方なのです!
イ)主の教えに驚嘆した地方総督の救い(13:12)
●最後の最後になりました。12節です。実に、驚くべき御言葉が記されています!何と記されているでしょうか?「総督はこの出来事を見て、主の教えに驚嘆し、信仰に入った」という御言葉をもって、このキプロス島の首都パポスでの出来事が締めくくられています!これは物凄い締めくくりの言葉です!「総督はこの出来事を見て」信仰に入ったのではありませんでした!奇跡的な出来事によってではなくて、「主の教えに驚嘆し、信仰に入った」のです!この使徒の働きを通して、奇跡の役割を正しく理解する事は大切です!それは、神は奇跡を用いて、使徒たちが本当に神から遣わされた者たちであるという事、それゆえ彼らが教える教えや、取り次ぐメッセージが真実なものであるという事でした!この総督は、奇跡を通して確証された神の教えを通して信仰に導かれたのです!(Wow! & Wow!)これが、最後に押えておくべき重要なポイントです!
●この総督の信仰は本物のであったのか、という疑問を持つ人がいるかも知れません。「驚嘆して信仰に入ったのだから、日にちが経つと冷めてしまって信仰はなくなるかも知れない」と思う人がいるかも知れません。誤りのない聖書が「信仰に入った」と伝えていますので、その通りなのですが、実は、聖書以外の資料が、その事の真実性を証明しています!19世紀の偉大な考古学者であるウィリアムズ・ラムゼイ卿が、次のように伝えています。「セルギウス・パルウス、その総督の娘がクリスチャンでした。彼女の息子ガイウス・クリスタニウス・フロントも、同じように(クリスチャン)でした。彼は、ローマの元老院に入ったピシディアのアンティオキアの最初の市民でした」。※2キプロスの地方総督セルギウス・パウルスの信仰は娘に伝わり、そしてまた孫にまで伝わっていた、という事がローマ世界の記録にも残されていたのでした!(I see! & Great!)地方総督セルギウス・パウルスは実在し、その信仰は本物であったのです!
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【まとめ&適用】 それでは、メッセージのまとめと適用をしましょう。
●一つ目に、霊的使命に従う教会とは、聖霊なる神によって、宣教の働きを進める教会です!私たちの教会は、一人一人が聖霊によって訓練されて実績を積み、熟練へと向かっているでしょうか?そして、アンティオキア教会のお手本に倣って、宣教のために、用いられる教会となっているでしょうか?
●二つ目に、主の働きをするに当って、霊的妨害は当たり前です!往々にして、外からの妨害に対してはよく対処できるのですが、内部からの妨害に対して、その準備はできているでしょうか?教会内部の問題を取り扱う力が、教会に与えられているでしょうか?あなた個人にとっての霊的妨害は何なのでしょうか?サタンは、どのようにあなたの信仰の歩みを妨害しようと働き掛けているのでしょうか?その妨害を主に明確に示していただき、主に取り除いてもらおうではありませんか?
●三つ目に、霊的勝利を得る教会は、聖霊に満たされた神の器たちがサタンの策略を見抜き、主の教えを告げ知らせ、それによって魂が回心へと導かれる働きをします!いかがでしょうか、私たちの教会は、サタンの策略を見抜く事ができる群れでしょうか?霊を見分けて取り扱い、そして主の教えが語られる事によって、魂が救われているでしょうか? それでは、お祈りしましょう。
【結 論】
「総督はこの出来事を見て、主の教えに驚嘆し、信仰に入った」(使徒13:12)。
[参考資料]
※1 ジョン・マッカーサー、『マッカーサー新約注解書/使徒の働き13-28』(ムーディー出版、1996)(John MacArthur, The MacArthur New Testament Commentary, Acts 13-28, The Moody Bible Institute of Chicago, 1994, p.9.)
※2 同上(p.11)。
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